小本こほん)” の例文
莞爾くわんじとしてきながら、よし/\それもよし、蒲鉾かまぼこ旅店はたごや口取くちとりでお知己ちかづき烏賊いか鹽辛しほから節季せつきをかけて漬物屋つけものやのびらでとほり外郎うゐらう小本こほん物語ものがたり懇意こんいなるべし。
城の石垣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
帛紗包ふくさづつみのなかに入つてゐるのは他でもない、小本こほんの『膝栗毛』の一冊で、この剽軽へうきんな喜劇俳優やくしやは、借金取に出会でくはすか、救世軍を見るかして、気が真面目にふさぎ出すと
そのくせ私は能く事情をしって居る。誠に事細ことこまかに知て居るそのけは、小本こほんなんぞ読むにも及ばず、近く朋友共が馬鹿話に浮かれて饒舌しゃべるのを、だまっきいて居れば容易に分る。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ふと眼をいて見ると主人はいつのにか書斎から寝室へ来て細君の隣に延べてある布団ふとんの中にいつの間にかもぐり込んでいる。主人の癖として寝る時は必ず横文字の小本こほんを書斎からたずさえて来る。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
見附みつけに受附のような出っぱった室の窓ガラスが見えて、中に肥ったほおペタのあかい老婆が鼻眼鏡のような黒いひもの附いた玉の大きな眼鏡をかけて、横向になって表紙の赤茶けた欧文の小本こほんのぞいていた。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
よみさしの小本こほんふせたる炬燵こたつかな
自選 荷風百句 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
経本きょうほんもって、小本こほんをもって
まざあ・ぐうす (新字新仮名) / 作者不詳(著)
……びんのおくれ毛がかかるのを、とやかく言っては罰の当った話ですが、どうも小唄や小本こほんにあるように、これがヒヤリと参りません。べとべとと汗ばんで、一条ひとすじかかるともうとします。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)