小坪こつぼ)” の例文
私の経験では、初がつおは鎌倉小坪こつぼ(漁師町)の浜に、小舟からわずかばかり揚がるそれを第一とする。その見所みどころは、今人と昔人と一致している。
いなせな縞の初鰹 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
そして小太郎ぎみ(義貞)のお相手にはよい者と選ばれて、ここから近い利根川の舟遊び、文珠山の紅葉狩り、冬は小坪こつぼ雪団ゆきまろめと、四季いろいろな記憶は多い。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これに味方しました三浦大介の子ども三百余騎は、平家の側に立った畠山はたけやま勢五百余騎と由井ゆい小坪こつぼの浦で激戦を交えましたが、畠山勢が敗れ武蔵国へ退却しました。
日の西に入りてよりほどたり。箱根足柄あしがらの上を包むと見えし雲は黄金色こがねいろにそまりぬ。小坪こつぼうらに帰る漁船の、風落ちて陸近ければにや、を下ろし漕ぎゆくもあり。
たき火 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
小坪こつぼの鼻のがけの上に若葉に包まれてたった一軒建てられた西洋人の白ペンキ塗りの別荘が、夕日を受けて緑色に染めたコケットの、髪の中のダイヤモンドのように輝いていた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そうしてそのまま小坪こつぼ這入はいる入口のみさきの所まで来た。そこは海へ出張でばった山のすそを、人の通れるだけの狭いはばけずって、ぐるりと向う側へ廻り込まれるようにした坂道であった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
碧水金砂へきすいきんさ、昼のおもむきとは違って、霊山りょうぜんさき突端とっぱな小坪こつぼの浜でおしまわした遠浅とおあさは、暗黒の色を帯び、伊豆の七島も見ゆるという蒼海原あおうなばらは、ささにごりにごって、はてなくおっかぶさったようにうずだかい水面は
星あかり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
木工助家貞、平六家長、ほかの郎党たちも、れたりといえど大門を開き、貧しくはあれど小坪こつぼや式台を清掃して、明あかと、もかかげて、待ち迎えていてくれる。
碧水金砂へきすゐきんさひるおもむきとはちがつて、靈山りやうぜんさき突端とつぱな小坪こつぼはまでおしまはした遠淺とほあさは、暗黒あんこくいろび、伊豆いづ七島しちたうゆるといふ蒼海原あをうなばらは、さゝにごりにごつて、はてなくおつかぶさつたやうにうづだか水面すゐめん
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
『それは、ぜひ』と、主にならって、小坪こつぼ(庭)に面した縁に座を取っていながれた。
浜は鳴鶴ヶ岬から、小坪こつぼがけまで、人影一ツ見えぬところへ。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)