宿下やどさが)” の例文
「一人いたのですが、前々日に親類に不幸があるというので、暇を取って宿下やどさがりをしていました。だから当夜は家内一人きりの筈です」
人間灰 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あのときだ、おみやが宿下やどさがりで来て、伊達家に若ぎみの袴着はかまぎの祝いがあり、その機会に毒を盛る計画がすすめられている、ということを告げた。
少し気味がわるくなって、ひと晩でいいから宿下やどさがりをさせておくんなせえましとお願いに参ったんでござんす。
うも御前、世の中には種々いろ/\の気性の方もあったもので、瀧村殿にはわずかに三日や四日のお宿下やどさがりに芝居はお嫌い、花見遊山ゆさんなどと騒々しいことは大嫌いで
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
娘の浪路なみじが、この間、会うたとき、江戸初くだりの上方かみがた役者、雪之丞という者の舞台を、是非見たい故、宿下やどさがりの折、連れてまいってくれと申すので、中村座の方へ
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
おくみはこれまででも、おかみさんのところを実家さとのやうにしてときをりたづねて来た。女生徒を置いてゐられたときには、正月の宿下やどさがりに行つて泊めて貰つたりした。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
イエね、お嬢様にはまだ申上げませんが先日宿下やどさがりに家へ参りました時西洋風の柔いお料理を二つ三つ拵えて父や母に食べさせましたらどんなによろこびましてございましょう。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
おほくではれだけで此處こゝ始末しまつがつくなれば、理由わけいてやはおほせらるまじ、れにつけても首尾しゆびそこなうてはらねば、今日けふわたしかへります、また宿下やどさがりは春永はるなが
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一昨々日さきおとといあたりから、ちょっと宿下やどさがりをいたしておりますが」という返事であった。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
「何ぢや、宿下やどさがりなら奥にでも頼んだがよからう。」
ひょっと出て来ようと存じてまいったが、此の事が伯父に知れた日にア実に困るから、ひとに知れんようにしてわしも会いたいと思うから、来年三月宿下やどさがりの折に
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「お屋敷では宿下やどさがりは年に二度っきりないのよ、それも日のれるまでには帰らなければならないし、兄のところへも寄らなければならないのよ、さあ、早く立ってちょうだい」
曩日さきのひ宿下やどさがりに、中村座顔見世狂言で、江戸初下りの雪之丞女形おやまの舞台を、はじめて見物し、その夜、長崎屋三郎兵衛の心づかいで、料亭の奥の小間で、はからずこの絶世の美男と
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
母「何か塩梅でも悪くてさがって来たんじゃアあんめえか、それとも朋輩なかま同士揉めでも出来たか、宿下やどさがりか」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ちょうど宿下やどさがりで、お屋敷のほうは三日お暇が出ていたから、つぶれても心配はなかったのよ、あたし酔って、独りでさんざあの人をこきおろしたわ、自分のことはもちろんよ
宿下やどさがりにはきっと来ます、不自由でしょうけれどがまんしてね、そのうちにはまた」
宿下やどさがりの時にアわしは高崎まで行ってゝ留守で逢わなかったが、でかくなったね、今年で十八だって、今日もわれが噂アしてえた処だ、見違みちげえるようになって、何とはア立派な姿だアな、何うして来た
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)