好誼よしみ)” の例文
知らん男ぢや無いですか。何程いくら、酒が嫌ひでも、飯が嫌ひでも、日本人の好誼よしみとして、殊に今夜の如きは一月一日、元旦のお正月だ!。
一月一日 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「お使いのおもむきとは、それだけかの。——足利殿が、わざわざ、この正成ごとき者へ、好誼よしみを深うしたいと仰っしゃって下されたのか」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「検屍を受けたらこのお手紙の内容が表沙汰になるおそれがありますからね。同業者の好誼よしみというものがありますからね」
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
第一に隣り同士の好誼よしみということもある。五年前、こっちの村に水の出た時には、隣り村の者が来て加勢してくれたことをお前も知っているはずだ。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
このラマは旧教派に属して居ますからむろん妻君を貰うても差支えないのです。ギャア・ラマは私を同郷の人であると言うて大変好誼よしみをもって世話をしてくれました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
館の老臣でありながら、木曽家にとっては讐敵しゅうてきの、高遠の管領かんりょう伊那盛常もりつねひそかに好誼よしみを通ずるさえあるに、殿を夜な夜なおびき出して、惰弱だじゃくを教える奸臣かんしんが、お館の中にあるからじゃ
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さも有難げに押戴おしいたゞき幼年よりの好誼よしみと此程のあさからぬ餞別重々ぢう/\有難き仕合しあはせと恩を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「主君の仰せには、呉妹君をもとの室へお返しして、ふたたび長く好誼よしみをむすびたいと、切にご希望しておられる次第ですが」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
俺にも一つ作ってくれんか。親友の好誼よしみに一つけてくれい。何も詠まんで死ぬと体裁が悪いけになあ。貴公が作ってくれた辞世なら意味はわからんでも信用出来るけになあ。一つ上等のヤツを
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
はらやつに目にもの見せんとの思案しあんなり友達ともだち好誼よしみに賣てくれそれ即金そくきんだとて二分取り出してさしおけば三五郎は打笑ひ夫程に入用ならもつて行れよ金は入らぬといふをば重四郎そんならかうようと彼の二分を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「こういう時こそ、玄徳との好誼よしみかし、お使いを派して、彼の協力をお求め遊ばすのがしかるべきでしょう」と、決った。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「将軍とてまえとは、同じ趙氏ですな。同姓であるからには、先祖はきっと一家の者だったにちがいない。どうか長く一族の好誼よしみをむすんで下さい」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の望みどおり同盟の好誼よしみをむすび、その代りに、直ちに、曹仁の軍勢をもって荊州へ攻め入ることを条件とするならば、魏も否やをいう口実なく
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つつしめ、卿らは何をいうか。この韓遂が起ったのは、馬超の父馬騰に対して、生前の好誼よしみに酬う義心一片。何で今さら、彼を捨てて、曹操に降ろうぞ」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
故に、両国の好誼よしみを傷つけんことをおそれて、敢て、最前から放たずにいるのだ。この上、要らざる舌の根をうごかし、みだりに追いかけて来ぬがよいぞ
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
漁網の魚は、これを採って一さんの卓にのぼせ、地は割譲わけて、ながく好誼よしみをむすぶ引出物としようではないか。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
李傕りかくという者ですが、丞相じょうしょうは常々からふかく将軍を慕っておられるので、特に、それがしに使いを命ぜられ、長くあなたと好誼よしみを結んでゆきたいとの仰せであります。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これは幕命である、たとえ両家の好誼よしみは欠くも、ぜひのない儀——」と、しているに相違ない。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小柳生城の中へ、わっぱひとりを連れて、堂々と、入り込んでござった不敵さは、曲者くせものながらよいつらがまえ。それに、一せき好誼よしみもある。——腹を切れ、支度のあいだは待ってやろう。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鎮台の武官たる公職にありながら、ひそかには、清風山の賊と好誼よしみを通じ、軍を私兵化して、人民の財をしぼり上げるなど、平素のことは残らず慕蓉閣下のお耳にも入っているのだ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この後は、長く唇歯しんし好誼よしみをふかめ、共々、漢室の宗親たる範を天下に垂れん」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いかんせん、これまでは、政途のいばら、四囲の諸事情、足利家として、あらわに御当家と好誼よしみを厚うするなどの儀は不可能にございましたが、今はまったく天下の形勢もことなってまいりました。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「怒りゃあしねえよ。ただこっちは、いぜんの好誼よしみで、おなじことなら、てめえも共に、立身出世をと思っているのに、あいそッ気のねえ返辞をしやがるから、ついまずいつらになったまでさ」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
呉王に奏してわが蜀と長久の好誼よしみをむすび、共に魏をうって、共栄の歓びをわかたん日の近きに来るように、あなたからも切におすすめ下さるよう、ご協力のほど、かくの如くお願い申しあげる
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうご挨拶をされると恐縮します。四条道場には、以前、清十郎殿との好誼よしみもあるので、助太刀とまでは行かずとも、十分好意をもっているつもりなのに……余りといえば、雑言を吐くので」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)