大海たいかい)” の例文
棒同然な物で大海たいかい乗切のっきるのでありますから、虫のうより遅く、そうかと思うと風の為に追返されますので、なか/\捗取はかどりませぬ。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
人も、さほど多く乗せる必要はないが、さりとて大海たいかいを乗り切って外国に行くに堪えるだけの、人と荷物とを容れ得るものでなければならん。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
また、神さまが、大海たいかいのまん中へこの日本の島を作りお浮かべになった、そのときのありさまにもよくている。ほんとはとうとくもめでたいことである。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
今川橋いまがはばしきは夜明よあかしの蕎麥掻そばがきをそめころいきほひは千きんおもきをひつさげて大海たいかいをもおどえつべく、かぎりのひとしたいておどろくもあれば、猪武者いのしゝむしやむか
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あの渺々びょうびょうたる、あの漫々まんまんたる、大海たいかいを日となく夜となく続けざまに石炭をいてがしてあるいても古往今来こんらい一匹も魚が上がっておらんところをもって推論すれば
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
東京とうきょうまちは、ひろいのでした。大海たいかいに、いしげたようなものです。ちいさな、一つのさかずきはこの繁華はんかな、わくがように、どよめきのこる都会とかいのどこにいったかしれたものではありません。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「しかし、御不浄へ行く前でよかった。御不浄から出て来た足では、たまらない。何せ眉山の大海たいかいといってね、有名なものなんだからね、その足でやられたんじゃ、ミソも変じてクソになるのは確かだ。」
眉山 (新字新仮名) / 太宰治(著)
大海たいかいの轟、巴里の轟も……
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
待てど暮せど人も来ず、身の上にも別に変りたる事もなく、食物しょくもつあさるのほかは日々船繕いに余念なく、無事に大海たいかいへ乗出すことの出来るようにと工夫する外にはなんの考えもございませぬ。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「眉山の大海たいかいも?」
眉山 (新字新仮名) / 太宰治(著)