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たいかい
今川橋の
際に
夜明しの
蕎麥掻きを
賣り
初し
頃の
勢ひは千
鈞の
重きを
提げて
大海をも
跳り
越えつべく、
知る
限りの
人舌を
卷いて
驚くもあれば、
猪武者の
向ふ
見ず
あの
渺々たる、あの
漫々たる、
大海を日となく夜となく続けざまに石炭を
焚いて
探がしてあるいても古往
今来一匹も魚が上がっておらんところをもって推論すれば
東京の
街は、
広いのでした。
大海に、
石を
投げたようなものです。
小さな、一つのさかずきはこの
繁華な、わくがように、どよめきの
起こる
都会のどこにいったかしれたものではありません。