“塞(つか)” の例文
何しろ僕はこれを見ると同時に一種の寒気(さむけ)を覚えて恐(こわ)いとも哀(かな)しいとも言いようのない思が胸に塞(つか)えてちょうど、鉛の塊(かたまり)が胸を圧(お)しつけるように感じました。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
津田は塞(つか)えた。小林を研究し尽した上でなければ確(しか)とした返事は与えられなかった。夫人は再び訊(き)き直した。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そもそもこの口が開いたときに、墓の彼方に通う末期(まつご)の声にも似た一種の音響を発したが、直(じ)きに舌が捲くれて咽喉(のど)へ塞(つか)えたので、その音響はぱったり止まった。
青蠅 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
陽気に箸を取ったが、ふっと伸子は嚥(の)みこんだ飯が喉で塞(つか)えるほど情がせきあげて来るのを感じた。
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
これだけ繰り返した津田はいったん塞(つか)えた。その後(あと)で継(つ)ぎ足(た)した文句はむしろ蹣跚(まんさん)として揺(ゆら)めいていた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
愕然(ぎょっ)としてマスクを投げだし、あわてて女の眼瞼(まぶた)をあけると瞳孔が散大して、虹彩が殆んどなくなっているではありませんか。私は『待った!』と叫ぼうとしたが、言葉が咽喉(のど)に塞(つか)えて出て来ません。
麻酔剤 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
悟(さとり)の遲速(ちそく)は全(まつた)く人(ひと)の性質(たち)で、それ丈(だけ)では優劣(いうれつ)にはなりません。入(い)り易(やす)くても後(あと)で塞(つか)へて動(うご)かない人(ひと)もありますし、又(また)初(はじ)め長(なが)く掛(か)かつても、愈(いよ/\)と云(い)ふ場合(ばあひ)に非常(ひじやう)に痛快(つうくわい)に出來(でき)るのもあります。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
入りやすくても後(あと)で塞(つか)えて動かない人もありますし、また初め長く掛かっても、いよいよと云う場合に非常に痛快にできるのもあります。けっして失望なさる事はございません。ただ熱心が大切です。
門 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
話しは「えゝ」で塞(つか)へた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それで猶(なお)のこと塞(つか)えた。
元日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)