基督教キリストきょう)” の例文
今より六、七十年前、英国の思想家のあいだに基督教キリストきょう柔弱にゅうじゃくに流るるを憤慨ふんがいして、いわゆる腕力的基督教マスキュラークリスチャニーチーを主張したものがあった。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
わたしの信ずるところによれば、或は柱頭の苦行を喜び、或は火裏の殉教を愛した基督教キリストきょうの聖人たちは大抵マソヒズムにかかっていたらしい。
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「成程、人出は銀座や日本橋以上だ。この筋だね、榊原君の親父さんが若い時夏帽子を買って翻然ほんぜん基督教キリストきょう帰依きえしたのは?」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
基督教キリストきょうの伝説をかりていえば、アダムの堕落があってこそ基督の救があり、従って無限なる神の愛があきらかとなったのである。
善の研究 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
当時の私にとっては基督教キリストきょうイコール高倉であった。それほどに私は一時先生に傾倒した。が、二十の年にはもう教会から離籍して浪人してしまった。
西隣塾記 (新字新仮名) / 小山清(著)
白い鳩は基督教キリストきょうの信徒には意義があるかも知れないが、然らざるものの葬儀にこれを贈るのは何のためであろう。
西瓜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
基督教キリストきょう的解脱だったのです。南蛮寺建立というところで、幕を閉じようと致しました。解脱に入るまでには煩悩ぼんのうがあります。煩悩は無数の闘争を産みます。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私が盛に哲学書をあさったのも此時で、基督教キリストきょうのぞき、仏典を調べ、神学までも手を出したのも、また此時だ。
予が半生の懺悔 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
私はそれまでにおきょうの名を度々たびたび彼の口から聞いた覚えがありますが、基督教キリストきょうについては、問われた事も答えられたためしもなかったのですから、ちょっと驚きました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼女は、そのとき基督教キリストきょうの信仰に這入はいらうとしてゐました。しかしそれも、彼女を捉へる事は出来なかつたやうです。彼女はしよつちゆう、何か考へ事をしてゐました。
背負ひ切れぬ重荷 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
奴なきお夏さんは、撞木しゅもくなき時の鐘。涙のない恋、戦争のない歴史、達引たてひきのない江戸児えどっこ、江戸児のない東京だ。ああ、しかし贅六ぜいろくでも可い、私は基督教キリストきょうを信じても可い。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
基督教キリストきょうよりももっと古いものだそうで、暦の数学がまだそう精確でなかった時代に、強いていろいろと理窟を付けて、これをキリストという神の子の生まれた日にしたという話である。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
母親は、「ナゼ基督教キリストきょうなどにしたものか。」と後悔した。計算翁は其様ことに頓着なく、両手をしかと十字架に打ち止めてしまった。——かくて両足も足頭あしくびのあたりから、がんがんと打ち貫いた。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
これこそ実にニーチェのいわゆる治者ちしゃの道徳である。これは前に述べた女らしく柔順なれという基督教キリストきょうに対し、男らしかれという教訓である。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
と私は長く忘れていた基督教キリストきょう贖罪説しょくざいせつを持ち出して慰めた。実際、斯ういう人にジョンソン博士あたりの説教を聴かせたら有効だろうと思った。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
答 我らの生命に関しては諸説紛々ふんぷんとして信ずべからず。幸いに我らの間にも基督教キリストきょう、仏教、モハメット教、拝火教はいかきょう等の諸宗あることを忘るるなかれ。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
かくの如くにして始めて真に主客合一の境に到ることができる。これが宗教道徳美術の極意である。基督教キリストきょうではこれを再生といい仏教ではこれを見性けんしょうという。
善の研究 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
此哲人は如何どんな事を言っている。クロイツェル、ソナタの跋に、理想の完全に実行し得べきは真の理想でない。完全に実行し得られねばこそ理想だ。不犯ふぼん基督教キリストきょうの理想である。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
しかもお使番が女教師の、おまけに大の基督教キリストきょう信者と来ては助からんねえ。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「秀子さんは、まさか基督教キリストきょうじゃないでしょうね」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「河原君、基督教キリストきょう以外に人類の救済がないというのはジョンソン博士の我田引水論がでんいんすいろんだよ。君は何う思う?」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「それは基督教キリストきょう、仏教、モハメット教、拝火教はいかきょうなども行なわれています。まず一番勢力のあるものはなんといっても近代教でしょう。生活教とも言いますがね。」
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
先頃始めて神に関する一書を出しておおい基督教キリストきょう罵倒ばとうし、基督教の教ゆる神は論理上承認し難い、しかして自分の信ずる神、むしろ自分の発見した神は各自の心に存在し、各自と生命を共にし
自由の真髄 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
神さまの道、教えるの学校! 基督教キリストきょう紳士しんし、組み立ての学校! 今からそれ分らない人、後から失望、お気の毒であります。学問の為め勉強の人、早くお帰りなさい。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
騎士のやりに似ているのは基督教キリストきょうの教える正義であろう。此処に太い棍棒こんぼうがある。これは社会主義者の正義であろう。彼処に房のついた長剣がある。あれは国家主義者の正義であろう。
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「宜いさ。それぐらい度胸が据っていないと両本願寺の膝元で基督教キリストきょうの伝道は出来なかろうからね」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と妙に消極的な教訓ばかり頭にみ込んでいた。それというのも私達の学校はアメリカの宣教師の経営による基督教キリストきょう学校で、教育方針が実社会の栄達に適していなかった。
首席と末席 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
基督教キリストきょうの方へ引っ張られるんだろう? 牧師ってものは見込をつけると根気よくやって来る」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)