唐銅からかね)” の例文
その落した大火鉢というのは、唐銅からかねの恐しく重そうな獅噛み火鉢で、少し濡れた灰を戻して性懲しょうこりもなく、もとの場所に据えてありました。
一段高い廊下の端、隣座敷の空室あきまの前に、唐銅からかねさびの見ゆる、魔神の像のごとく突立つったった、よろいかと見ゆる厚外套、ステッキをついて、靴のまま。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これより先、道庵の家の一間で、中に火の入れてない大きな唐銅からかね獅噛火鉢しかみひばちを、盲法師めくらほうしの弁信と、清澄の茂太郎が抱き合って相談したことには
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
私等は奥の院の裏手に廻り、提灯を消して暗闇くらやみに腰をおろした。其処そこは暗黒であるが、その向うに大きな唐銅からかねかなへがあつて、蝋燭らふそくが幾本となくともつてゐる。
仏法僧鳥 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
かなりに古くなっている竹は経筒きょうづつぐらいの太さで、一方の口には唐銅からかねの蓋が厳重にはめ込んであった。
半七捕物帳:33 旅絵師 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
みづしめく唐銅からかねひつうへ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
霰弾砲さんだんはう唐銅からかねの上に
その落した大火鉢といふのは、唐銅からかねの恐ろしく重さうな獅噛み火鉢で、少し濡れた灰を戻して性懲しやうこりもなく、もとの場所に据ゑてありました。
何、唐銅からかねの八千貫、こうせさらぼえた姥が腕でも、指で挟んで棄てましょうが、重いは義理でござりまするもの。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
身を起して見ると——見るというのは勿論、その特有の超感覚で見るのです、以前も以下もそれに準じていただきたい——例の唐銅からかね獅噛しがみの大火鉢には相当火が盛られていた。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
其処そこは暗黒であるが、その向うに大きな唐銅からかねかなえがあって、蝋燭ろうそくが幾本となくともっている。奥の院の夜は寂しくとも、信心ぶかい者の夜詣りが断えぬので、燈火の断えるようなことは無い。
仏法僧鳥 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
みづしめく唐銅からかねひつうへ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
古風こふうな、うすい、ちひさなまげつたのが、唐銅からかねおほき青光あをびかりのする轆轤ろくろ井戸繩ゐどなはが、づつしり……石築いしづき掘井戸ほりゐど
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
正面には唐銅からかねの大火鉢へ、銀の網の上から手をかざして、五十年輩の立派な人物が坐り、脇息にもたれたまゝ、寛達な微笑をさへ浮べて此方を眺めて居るのでした。
正面には唐銅からかねの大火鉢へ、銀の網の上から手をかざして、五十年輩の立派な人物が坐り、脇息きょうそくもたれたまま、寛達な微笑をさえ浮べてこっちを眺めているのでした。
「鉢前にゃ、が明けたら見さっせえまし、大した唐銅からかねの手水鉢の、この邸さいて来る時分に牛一頭かかった、見事なのがあるけんど、今開ける気はしましねえ。……」
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
此處にはいつぞやお夢の頭の上に落された唐銅からかねの大火鉢が性懲しやうこりもなく据ゑられて、火もなく鐵瓶てつびんもありませんが、冷たい灰が火鉢の半分程も減らされて居るのでした。
此処にはいつぞやお夢の頭の上に落された唐銅からかねの大火鉢が性懲しょうこりもなく据えられて、火もなく鉄瓶てつびんもありませんが、冷たい灰が火鉢の半分ほども減らされて居るのでした。