哈爾賓ハルピン)” の例文
余作君は父翁の業を嗣いで医者となり、日露戦後哈爾賓ハルピンで開業して居たが、此頃は牧場分担の為め呼ばれて父翁の許に帰って居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
密輸入者の背後には、その商品を提供する哈爾賓ハルピンのブルジョアが控えているばかりではなかった。資本主義××が控えていた。
国境 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
伯父は直ぐに帰って来て母親からその地図を捲き上げると、哈爾賓ハルピンに引返して、私の父が軍事探偵である事をG・P・Uゲーペーウーに密告したに違いないのだ。
冥土行進曲 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
おれやう腰辯こしべんは、ころされちやいやだが、伊藤いとうさんやうひとは、哈爾賓ハルピンつてころされるはういんだよ」と宗助そうすけはじめて調子てうしづいたくちいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
午後の二時に哈爾賓ハルピンへ着いた。プラツト・フオオムに立つて居た日本人は私の爲に出て居てくれた軍司氏ぐんじしであつた。電報が來たと云つて齋藤氏が持つて來た。
巴里まで (旧字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
午後の二時に哈爾賓ハルピンへ着いた。ブラツト・フオオムに立つて居た日本人は私の為に出て居てくれた軍司ぐんじ氏であつた。電報が来たと云つて斎藤氏が持つて来た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
これも細かな表情などは少しも覚えていない、哈爾賓ハルピンで亡くなったのはそれから間もないことであった
生前身後の事 (新字新仮名) / 中里介山(著)
旅を愛し日本内地は隅から隅を歩き、琉球諸島、南洋、支那大陸、オホーツク海を遍歴し、飛行機も誰よりも先に何度も乗り込み、満洲は哈爾賓ハルピンにまで二度も渡った。
「あの老人を哈爾賓ハルピンから見送って来た朝鮮人が、下関駅でタッタ今電報を打ちました。銀座尾張町のレコード屋の古川という男に打ったものですが……」
人間レコード (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「おれみたような腰弁こしべんは、殺されちゃ厭だが、伊藤さんみたような人は、哈爾賓ハルピンへ行って殺される方がいいんだよ」と宗助が始めて調子づいた口をいた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
長春ちやうしゆんから来て哈爾賓ハルピンうしろへ二つ繋がれた客車かくしやの人をも交ぜて三十人余りの女の中でこの婦人が出色の人である。昼前にはもうどの男の室でもその噂がされて居たらしい。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
エナメル塗ったかかとの高い靴や、——そういうかさばらずに金目になる品々が、哈爾賓ハルピンから河航汽船に積まれて、松花江を下り、ラホスースから、今度は黒竜江を遡って黒河へ運ばれてきた。
国境 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
かく滿洲まんしうだの、哈爾賓ハルピンだのつて物騷ぶつさうところですね。ぼくなんだか危險きけんやう心持こゝろもちがしてならない」とつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
私たちの愚かな母親弓子は当時哈爾賓ハルピンの英国商人の処に奉公していた伯父に、その事を通信したらしい。
冥土行進曲 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
哈爾賓ハルピンから運ばれたばかりのものを持ちこんでいるのだ。
国境 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
「そうだよ。永い事、和蘭オランダに居た若島中将閣下は哈爾賓ハルピンから飛行機で来たあのじじいの写真を見ただけで、テッキリ人間レコードということがわかったという位だからね」
人間レコード (新字新仮名) / 夢野久作(著)
橋本が、全体どこまで行くつもりなんだいと聞くから、そうさまあ哈爾賓ハルピンぐらいまで行かなくっちゃ義理が悪いようだなと答えたが、その橋本はどうする料簡りょうけんかちっとも分らない。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
何でも長城ちょうじょうから哈爾賓ハルピンを越えると爆薬ハッパの値段が二倍になる。露西亜境の黒龍江こくりゅうこうを渡ると四倍になるんだそうですが、これは拳銃ピストルでも何でも、禁制品やかましいものはミンナ同じ事でしょう。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
哈爾賓ハルピンに行く途中で、木戸さんに聞いた話だが、満洲の黄土はその昔中央亜細亜アジアの方から風の力で吹き寄せたもので、それを年々河の流れが御叮嚀ごていねいに海へ押出しているのだそうである。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その中に東京の真中でも容易に見る事のできないくらい、新しい奇麗きれいなのが二台あった。御者ぎょしゃが立派なリヴェリーを着て、光った長靴を穿いて、哈爾賓ハルピン産の肥えた馬の手綱たづなを取って控えていた。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
間もなく砂金採掘の用意をして渡満した父は、哈爾賓ハルピンの市外で、露人に誘拐されて満洲里マンチユリーに連れて行かれる途中、列車の中で射殺されて鉄橋の下に投棄てられていたという事実が報道されている。
冥土行進曲 (新字新仮名) / 夢野久作(著)