可怪おか)” の例文
「それが可怪おかしいんで、せっかく穴は拵えたが、あんまり小さくて、泥棒が入れなかったそうですよ。間抜けな話じゃありませんか」
尠くとも、今迄は相当に微細な小径まで符合していた地図が、この沼に限ってそれを全然落している、というのも可怪おかしなことだった。
植物人間 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
しかし可怪おかしくはないので、非常にいい学校ということになっているので、シカゴからも、他の町からも、沢山生徒が来るからである。
知られざるアメリカ (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
未だ其上に可怪おかしいのは、此上天気に紺蛇の目の雨傘を持っていた。其癖素足に藁草履を穿いて、ピタピタと路を踏むので有った。
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
なにしろこの騒動のおこる前に、鍋久で二度も金を取られたというのがどうも可怪おかしい。だが、ここにもう一つ考えようがある。
半七捕物帳:49 大阪屋花鳥 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
こりゃ可怪おかしい、まるで友達扱い、変だなと思いながら上の方へずっとあがって行くと、英語で「あなた私を忘れたか」というを見ると
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
酒のお酌や飯の給仕に出るのがその綾子さんで、どうも様子が可怪おかしいと思ってるてえと、やがてのこと阿母さんの口から縁談の話が出た。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ところがここに、世にも可怪おかしな話といえば必ず選ばれるような、水棲人インコラ・パルストリスを三度目に見たものが現われた。それが、余人ではないカムポス。
人外魔境:05 水棲人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
百合子は、尾形警部ともあろうものが、私立探偵などを引張って来たことを、可怪おかしく思いながら、家の一間一間を、案内して歩きました。
赤耀館事件の真相 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「……そうでしたか……道理で可怪おかしいと思いました……いや、申上げますが、実は、此処でも変なことがあったんです」
白妖 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
可怪おかしいと思って様子を探っていると、これも慌てて海に飛び込んだ頭株の四五人が、ヒドイ風邪を引いて寝てしまった。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そして子供の手を突離して駈け出そうとする、が可怪おかしなことに死んだはずせ青ざめた子供達が、彼の先へ先へとコロがって足許あしもとふさいでしまう。
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
可怪おかしいぞ、これは。この間父が『お前は養子に行く気があるか?』と訊いた。手が廻っているのかも知れない」
冠婚葬祭博士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
これのために牢獄の危険を冒し……裁判も忘れ……断頭台も恐れなかったのか……可怪おかしい、どうも不思議だ……
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
可怪おかしいわねえ。いろいろと計量して考えているのは、つまりは私の俗的賢明さであるのでしょうか。
それに学問がないから虐めることが出来ないなどというのは、如何にも可怪おかしな言葉である。
愛に就ての問題 (新字新仮名) / 小川未明(著)
これは小間使を安心させて、自殺することを悟られない為の用心と見られるが、小間使が出て行ってから、毒薬と一緒に残ったもう一回分の催眠剤を取ったのは可怪おかしいではないか。
ここらで種蒔き爺さんといえば、さしずめ乗鞍だが、待てよ、少し可怪おかしいぞ、あれはここでは前山の蔭で見えないはず……あ、別ものか? 一瞬私の頭にひらめいたのが果してあたった。
ある偃松の独白 (新字新仮名) / 中村清太郎(著)
古川医師は、どうも可怪おかしい、不思議なこともあるものと首を傾けていると、こちらの師匠の容態が、また危機に迫ったというので、診断して見ると、これはどうも大変なことになっている。
「何うも、可怪おかしい、何か、悪い企みがあるのではないか」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
「八つ折に畳んで、長い間持って歩いたんだろう。折目がひどく痛んで、変な匂いまで付いているが、——可怪おかしいのは日付だよ」
それでも阿部さんが早く気がついて、なんだか自分の気が可怪おかしいようだと思って、前以て弟に取押方をたのんで置いたのは大出来でした。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
……ハテ可怪おかしいな……と思いながら祭壇の横のドアを開くと八畳ばかりの板張りになって、寝台が一つと、押入れと、台所と戸棚が附いている。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
出ない方が実験が下手かも知れないし、出る方が可怪おかしいのかもしれないので、騒ぎは益々大きくなった。
千里眼その他 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
可怪おかしな事に、この黒吉の心を、急廻転させた、その原動の葉子が、此処には、姿を見せていなかった。
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
つまり直ぐ隣りの南室へ行けば充分見る事の出来る富士の風景を、わざわざ箱根山しか見えない東室にとじこもって写生していたと云うのだ。これは確かに可怪おかしい。
闖入者 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
「初めは冗談だと思ったんですよ。けれど、様子が可怪おかしいんでしょう。だから驚いちゃって——」
白蛇の死 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「教え振りを拝見に上るのはお弟子入りも同じことじゃありませんの? 可怪おかしな人ねえ、あなたは。同じお稽古をなさるなら真正ほんとうの先生をお頼みになっちゃ如何?」
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「しかもお前達夫婦の籍は、お前の養家じゃなくて、亭主の家の方にあるんだから可怪おかしいよ」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
しかしマヌエラの目は、狂わしげなものを映してぎょろりとすわっている。ひょっとすると心痛のあまり気が可怪おかしくなったのかもしれない。その間も、なおも譫言うわごとは続いてゆく。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
現場を見て第一に感じたのは、あれだけの塔をスリ替えるのに窓からやると云うのは可怪おかしい。あの高い窓から塔を一つ運び出し一つは運び入れると云う事は、一寸不可能じゃないかね。
真珠塔の秘密 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
全く可怪おかしいことですね。
「眼ばかりじゃねえ、宝冠の瓔珞ようらくから、襟も肩もぐっしょりだ。頭の上から涙を流すのは、仏様にしても可怪おかしくはないか、八」
もっとも今月は八月で、半季の出代り月じゃああるが、晦日みそかにもならねえうちに暇を出されるのはちっと可怪おかしい。これにゃあ何か訳がありそうだ。
半七捕物帳:49 大阪屋花鳥 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
アメリカという国は、可怪おかしな国で、月給の多い男が、早く出勤する習慣になっている。
パーティ物語 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
また物静かな園長が落すというのも可怪おかしい。鴨田が後にあやしまれることを勘定かんじょうに入れて落して行ったか、さもなくて鴨田がみずから落ちていたといつわり届けたものか、どっちかである。
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
可怪おかしなことにはその背景に桜が繚爛りょうらんと咲き、仮装の人たちがきびすを接して往来しているのです——私はそれを窓にもたれて、さも当りまえのように平気で眺めているのでした。
歪んだ夢 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
何も知らない私をつかまえて、思いもかけぬ大学生に扮装させたり、美しい少女を許嫁だなぞと云って紹介ひきあわせたり、いろいろ苦心しているところを見るとドウモ可怪おかしいようである。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
けれど二人は、この熱気のために気が可怪おかしくなったのではないのだ。
「太平洋漏水孔」漂流記 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
可怪おかしいよ。あれは分っていると言って奥へ引っ込んでしまった」
恩師 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「なるほど、それは御心配な事じゃ、警察の手も入った事だろうが、生きて居るとも死んだとも、その辺の事が解らないとは可怪おかしいな」
古銭の謎 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
鶏の様子がだんだんに可怪おかしくなって、お六らをみると飛びかかりそうになるので、腹が立つやら気味が悪いやらで、かの八蔵に売ってしまったのです。
半七捕物帳:51 大森の鶏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
……が……しかし又考えてみますと、この道ばかりは別とはいえ、あの若旦那のなさる事にしてはチョット様子が可怪おかしいと気がつきましたので、又、何とのう胸騒ぎがし初めました。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
黒吉自身も可怪おかしいとは思ったが、この際、これ以外に方法はなかった。
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
お前さんには言わなかったろうが鯨狼アー・ペラーが捕われた位置を、ロングウェルは経度まで知っている。すると、海獣が遠い陸地のなかにいる。可怪おかしい。それに、ミュンツァ博士のあの無電があるだろう。
人外魔境:08 遊魂境 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「しかし可怪おかしいね。会社の方の成績が悪いのなら兎に角」
冠婚葬祭博士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「だが可怪おかしいぞ」とわしは云った。
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「なるほど、それは可怪おかしい、突っ込んで調べ上げたら、とんだ大物が掛って来るかも知れない。もう少し見張っているがいい」
その娘のお絹というのは、お城坊主の次男とどうも可怪おかしいという噂で……。してみると、親分の鑑定通り、万次郎と大津屋とはぐるだろうと思いますね。
半七捕物帳:50 正雪の絵馬 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その上に十二三ぐらいの子供が取りすがって泣いている様子だから、可怪おかしいと思い思い、危険をおかして近寄ってみると、倒れているのは瘠せコケた中年男だが、全身紫色になった血まみれ姿だ。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)