口走くちばし)” の例文
私も驚ろいてくわしく様子を聞いて見ますと、わたくしの逢ったその晩から急に発熱して、いろいろな譫語うわごとを絶間なく口走くちばしるそうで
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「おお、これはたしかに、今大問題になっているBB火薬だ! これはたいへんだぞ」と、思わず、口走くちばしった。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
されたのです。実は寝言にお登和さんの事を口走くちばしって隣室の書生さんに聞かれたのが原因で、好意か悪意か親切ごかしにあんなものを買って来てくれて僕を
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
お光が色情しきじやうにほだされ迂濶うかつ口走くちばしり掛り合に成て當惑に及びしも口の禍ひなりさりながら天に口なし人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「——待てッ」龍太郎りゅうたろう飛鳥ひちょうのようにけて、女の体をうしろへきもどした。女は、なにか口走くちばしりながら、そのとたんに、ワッとやなぎの木の根もとへ泣きくずれてしまう。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
などすこし異様のことさえ口走くちばしり、それでも母の如きお慈悲の笑顔わすれず、きゅっとつまんだしんこ細工のような小さい鼻の尖端、涙からまって唐辛子とうがらしのように真赤に燃え
創生記 (新字新仮名) / 太宰治(著)
なんかと、おもはずらず口走くちばしつたのでせう。これいた亞尼アンニーははつとおどろいたのです。
思はず口走くちばしる絞るが如き一語『オ御許おゆるしあれや、君』。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
おれをどろぼうといったぞ。」と、口走くちばしりながら。
火を点ず (新字新仮名) / 小川未明(著)
つぶさに物語り彼忠兵衞を證據人とし私し駈込願かけこみねがひ致し度と涙をうかめて頼みける容子ようす貞心ていしんあらはれければ長助は感心なし今度忠兵衞がはからずお前方に過去すぎさりたる一けん口走くちばしりしはお光殿の貞心ていしん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
口走くちばし後悔こうくわいするなと云はるゝに長庵は猶もらずがほに御吟味の行屆ゆきとゞかざると申たる譯には御座無く全く御裁許さいきよ相濟あひすみたればこそ道十郎が死骸は取捨仰せ付けられ又た家財かざいは妻子へくだおかれしと申立る時越前守殿一そうこゑ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)