うらない)” の例文
ここに梓が待人まちびと辻占つじうら、畳算、夢のうらないなどいう迷信のさかんな人の中に生れもし育ちもし、且つ教えられもしたことをあらかじめ断っておかねばならぬ。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たけ高く面しゅのようなる人なり。娘はこの日よりうらないの術を得たり。異人は山の神にて、山の神の子になりたるなりといえり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
この部落のものが、徳川時代には、いわゆるシュクの徒ともなり、或いは陰陽師と呼ばれて、うらないをする部落ともなり、或いは芝居者などになっている。
賤民概説 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
もとより看板をかけての公表おもてむき商買しょうばいでなかったせいか、うらないたのみに来るものは多くて日に四五人、少ない時はまるで筮竹をむ音さえ聞えない夜もあった。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その方向を天意が示すうらないと見て、楊志は、何処いずこの地へ出る道とも知らず、やがてよろよろふもとの方へ降りていった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
洛書らくしょというものは最も簡単なマジックスクェアーである。それが聖典たるえきに関している。九宮方位きゅうきゅうほういだん八門遁甲はちもんとんこうの説、三命さんめいうらない九星きゅうせいぼく、皆それに続いている。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ネーにはナポレオンのこの奇怪な哄笑こうしょうの心理がわからなかった。ただ彼に揺すられながら、恐るべきうらないからがれた蛮人のような、大きな哄笑を身近に感じただけである。
ナポレオンと田虫 (新字新仮名) / 横光利一(著)
國「おとぼけでないよ、百両のお金が此の胴巻ぐるみ紛失ふんじつしたから、御神鬮おみくじうらないのと心配をしているのです、是がくなっては何うも私が殿様に済まないからお金を返しておくれよ」
「あれッ。大切な果物が皆河へ落ちた。王様へ差し上げるうらないの果物は皆流れて行って終う。ああ、勿体ない。勿体ない。あれ、取って下さい。取って下さい。誰も取ってくれなければ妾が行く」
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
十四の時からきゅううらないの道楽を覚え、三十時代には十年も人力車くるまを引いて、自分が小諸の車夫の初だということ、それから同居する夫婦のうわさなぞもして、鉄道に親を引つぶされてからその男も次第に
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「何をあのへぼうらない師めが、人を騒がせおって」
その花のうらない
「神経の起った時、わざわざそんな馬鹿な所へ出かけるからさ。ぜにを出して下らない事を云われてつまらないじゃないか。その後もそのうらないうちへ行くのかい」
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「おう、ご番卒でございますか。てまえは、泰山たいざん儒者じゅしゃですが、諸国遊歴がてら、うらないを売って旅費とし、また諸山の学問をきわめんとしている者でございまする」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「嘘だ。美紅姫はそんな悪い女でない。又そんな悪魔に魅入られるような女ではない。私はお婆さんの云う事を本当にする事は出来ない。他のうらないは皆当ったけれども、今の占だけは決して当らない」
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
相「ハヽア其のうらないは名人だね、驚いたねえ、成程、フム」