十年ととせ)” の例文
先生の御作によりてこの年月いかばかり心なぐさみしかをきこえあぐる機會のあらば嬉しからんと十年ととせに過ぎて思ひて變らず
幸助五六歳のころ妻の百合が里帰りして貰いきしその時りつけしまま十年ととせ余の月日ち今は薄墨うすずみ塗りしようなり、今宵こよいは風なく波音聞こえず。
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
十年ととせばかり前のことなるべし、ここより遠からぬブリョオゼンという村にあわれなるみなしごありけり。
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
母に別れてすでに十年ととせにあまりぬ。十年ととせの間、浪子は亡き母を忘るるの日なかりき。されど今日このごろはなつかしさのえ難きまで募りて、事ごとにその母を思えり。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
と、一年越、十年ととせも恋しく百年ももとせ可懐なつかしい声をかけて、看護婦のかたわらをすっと抜けて真直まっすぐに入ったが
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
十年ととせかわきをしづめんため、心をこめてわが目をとむれば、他の官能はすべて眠れり 一—三
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
なまけつつ十年ととせを経たりおこたりて十歳ととせ過ぎけむことをしおもふ君をぎつつ
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
女子をなごさかりは十年ととせとはなきものになるに、此上こよなき機會をりを取りはづして、卒塔婆小町そとばこまち故事ふるごとも有る世の中。重景樣は御家と謂ひ、器量と謂ひ、何不足なき好き縁なるに、何とて斯くはいなみ給ふぞ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
夕日てる雲見つつあれば海見ざるひさになりぬと此の十年ととせを思ふ
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
十年ととせまへの狂院きやうゐんのさくら狂人きちがひのわれが見にける狂院のさくら
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
十年ととせあまりを経たり。黄生俄かに病みぬ。
『聊斎志異』より (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
十年ととせまへに作りしといふ漢詩からうた
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
十年ととせは夢かまぼろしか
天地有情 (旧字旧仮名) / 土井晩翠(著)
三年みとせ十年ととせ……」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一日を十年ととせに数え
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
十年ととせばかり前のことなるべし、ここより遠からぬブリョオゼンといふ村にあはれなるみなしごありけり。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
昨日きのうのようなれど、指を折れば十年ととせたちたり。母上の亡くなりたもうその年の春なりき。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
十年ととせの末はよも待たじ、いま早やかれやまいあり。肩寒げにしおれたる、そのさまみまもらるる。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わがつま十年ととせ昔のきちがひのわが恐怖おそれたる桜花はなあらぬ春
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
一日を十年ととせに数え
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
思えば十年ととせは夢と過ぎて、母上はこの写真になりたまい、わが身は——。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)