切盛きりもり)” の例文
一たいに二人共、自分たちの実子に対しても、こまかな心づかいなどしない方で、いつも商売や家庭の切盛きりもりにかまけている方だった。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
私はあへてそれを試みた。そして其間に推測をたくましくしたには相違ないが、余り暴力的な切盛きりもりや、人を馬鹿にした捏造ねつざうはしなかつた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
投げやりな父に代り病身な母を助けて店の事をほとんど一人で切盛きりもりしたためもあるが、歴史や文学書にしたしんだので早く人情を解し
私の貞操観 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
何故なぜかとへば日本にほんまへべたやうに、財政状態ざいせいじやうたいへば大正たいしやうねんから今日こんにちまで一ぱん會計くわいけい毎年まいねん公債こうさい計上けいじやうされてある、すなは歳入さいにふ範圍はんゐおい歳出さいしゆつ切盛きりもり出來できない
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
お國は人目をはゞかり庭口のひらき戸を明け置き、此処こゝより源次郎を忍ばせる趣向しゅこうで、殿様のお泊番とまりばんの時には此処から忍んで来るのだが、奥向きの切盛きりもりは万事妾の國がする事ゆえ
家政のやり方や上手な経済の切盛きりもりについて彼から教えを受けたりしたものである。
煙草たばこの好きな叔母が煙管きせるを離さずに、雇人やとひにん指揮さしづしていそがしい店を切盛きりもりしてゐるさまも見えるやうで、其の忙がしい中で、をひの好きな蒲鉾かまぼこなぞを取り寄せてゐることも想像されないではなかつた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
大番頭の嘉助が存命の頃は、手代としてその下に働いていたが、今はこの人が薬方くすりかたを預って、一切のことを切盛きりもりしている。ふるい橋本の家はこの若い番頭の力で主にささえられて来たようなもので有った。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
年は三十一二で其の下婢が万事切盛きりもりを致して居ります。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)