出稽古でげいこ)” の例文
彼の生活の方便は、出稽古でげいこをしたり、例によって恥ずかしいほどの報酬で、芸術の著書をしたり、またまれには雑誌の原稿を書いたりすることだった。
第一、五紋いつつもんの羽織で、おはかまで、革鞄かばんをぶら下げて出稽古でげいこ歩行あるくなんぞ、いい図じゃあないよ。いつかもね。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「僕が来たのは……こういうわけさ。僕いま出稽古でげいこの口がまるでないんだ……で、なんとかして……もっとも、出稽古の口なんかちっともほしかないが……」
まさかの時にはいつ何時ばちをもつことにならないとも限らないので、もとから清元が地だったので、六十に近い女の師匠に出稽古でげいこをしてもらい、土橋を稽古していた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
今夜は謡いの出稽古でげいこの日にあたるので、これから例の堀田原へ出向かなければならなかった。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
糸巻きにまげ結んだ老女が、井上流の名手、京都から出稽古でげいこに来て滞留している京舞の井上八千代——観世かんぜ流片山家の老母春子、三味線をいているのは、かつて、日清役にっしんえきのとき
大橋須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
時々出稽古でげいこの面倒を見てやった尋常四年生の長男の姉だったろうではございませんか。
疑惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
學校がくかうかよひにからぬともでも出來できてはならず、一さいれにかせてまあてくれと親切しんせつおつしやつてお師匠しヽようさまから毎日まいにちのお出稽古でげいこ月謝げつしやしてとヾけして御馳走ごちそうしてくるまして
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
通例その時刻に彼女は出稽古でげいこをしていた。ところがつい少し前に、彼女は弟子でしから一言の手紙を受けて、今日は来ていただかなくてもよいと知らせられた。
出稽古でげいこの口にも離れ、衣類までもなくしてしまった上にさ、娘が死んでしまったので、もう君を親類あつかいする必要もないと気がついて、急にどきっとしたわけだ。
銀子自身があまり商売にれてもいないので、子供の見張りや、芸事を仕込んでもらうつもりで、烏森からすもりを初め二三カ所渡りあるいたという、二つ年上の女を、田村町から出稽古でげいこに来る
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ある日出稽古でげいこからの帰り道に、クリストフはオットーが同じ年ごろの少年と連れだってるのを、次の街路に見かけた。彼らはいっしょに親しく談笑していた。
その時は出稽古でげいこの口があったし、それにどうにかこうにか口すぎしていたので、彼は婆さんのところへ行かなかった。ところが一月半ばかり前に、その住所を思い出した。
セザール・フランクの有名な友人らがピアノの出稽古でげいこを少しも彼にやめさせようとはしないで、最後の日まで生活のためにつづけさせたのと、ちょうど同じであった。
彼は生活のために厭々いやいやながら出稽古でげいこをし、そのかたわら、筆を執った。その作品は大気のうちに花咲く望みがなくて、色せてき、空想的な非現実的なものとなっていった。
クリストフが出稽古でげいこからもどって来て見ると、寝台、箪笥たんす蒲団ふとん、衣類、すべて彼女の所有であったものが、すべて彼女のあとに残ってたものが、家の前の街路に並べられていた。
ナタン家と親しい家に彼女は出稽古でげいこをしていたが、そこで出会ってから同情を寄せられたのだった。そして彼女は人づきが悪かったにもかかわらず、ナタン家の夜会へも一、二度出席をいられた。
出稽古でげいこをしています。」