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入夫
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にふふ
かさね
來しが
當代の
新田のあるじは
家につきて
血統ならず
一人娘に
入夫の
身なりしかば
相思ふの
心も
深からず
且は
利にのみ
走る
曲者なればかねては
松澤が
隆盛を
思ひ付
獨り心の
中に
喜悦つゝ彼の畔倉重四郎は今藤澤宿にて
大津屋と云ふ
旅籠屋へ
入夫に
成改名して段右衞門と申す由を
聞し事あれば
先彼の方へ
行て金を
無心する時は
舊惡を
然し
自分は
入夫といふ
關係もあるしそれに
生來の
寡言なので
姻戚の
間の
協議にも
彼は
屈めて
歩行ながら三五郎に向ひ我等近頃
𬏣癪にて折々
難澁致すなりと申ければ三五郎聞て夫は彼の大津屋へ
入夫に
參つてより金が
溜りし故に
腰が
冷るの
成んなんど
戯談つゝ先へ行を
お
品の
死は
卯平をも
痛く
落膽せしめた。
卯平は七十一の
老爺であつた。
一昨年の
秋から
卯平は
野田の
醤油藏へ
火の
番に
傭はれた。
卯平はお
品が三つの
時に、
死んだお
袋の
處へ
入夫になつたのである。
親分にして
後家お勇の方へ
入夫に
這入名を大津屋段右衞門と改めて
先暫くは落付けり