兄哥あにき)” の例文
「銭形の兄哥あにき、この通りだ。種も仕掛けもねえ、が、三人が三人とも、下手人の疑いがあるから、どれを奉行所へ送りようもねえ」
兄哥あにき、随分人に気を揉ませるじゃねえか、こんな所に潜り込んでいるんだもの、いくら探したって分りッこはありゃしねえ」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
猪之はやはり大工で藤吉の弟分に当り、年は二十五歳だという。初め養生所へ頼みに来たのは、兄哥あにき分の藤吉であった。
こんの兄哥あにきもそういうし、乗組んだ理右衛門でええも、姉さんには内証にしておけ、話すと恐怖こわがるッていうからよ。
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
暫くすると、下から三人づれで登って来る連中がある、ガイドはシュトイリの弟で、兄哥あにきにまけないやま然とした男だった、これらは一番の電車でやって来たのだそうな。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
真顔で聞いて呉れる者は、お君ちやんより他はなかつたが、謀らずも今夜、君といふ同情者に出遇つて斯んな嬉しい事はない。今後、是非とも無二の親友としてつき合つて呉れ。俺は、何だか君が、兄哥あにきのやうな気がして来た。
露路の友 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
潰してはいられないぞ。三つ股の兄哥あにき、この道人を引っくくってくれ。寺社のお係りへ渡して、いわしくわえさして四つんいに這わしてやる
後生ごしょうだぜ。後生一生だ! うまくポンとやってくれ、頼ま、頼ま、新九郎の兄哥あにき、おっと、南無八幡大菩薩さま!」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ああ、これは——小学校へ通いはじめに、私の手をいてつれてってくれた、町内の兄哥あにきだ。」と、じとじとと声がしめると、たちがけの廊下から振返って
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「その通りだよ兄哥あにき、矢は上向きに突つ立つて居る、——しやがんだところを後からやられなきや、こんな工合になるわけはねえ」
その後、彼は旅から旅を流浪していたが、ふとこの木曾路へかかッた時、不思議な姿に変り果てた当時の御曹子の兄哥あにき——春日新九郎に出会ったのだ。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
作者夥間なかまの、しかも兄哥あにきが、このしみったれじゃあ、あの亭主にさぞ肩身が狭かろう、と三和土たたきへ入ると、根岸の日蔭は、はや薄寒く、見通しの庭にすすきなびいて、秋の雲の白いのが、ちらちらと
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「三輪の兄哥あにきもそんな事を考えているようだが、それだけは間違いだよ。若い娘が夜中に外へ出たからって、逢引とは限らねえ」
「——それはここの対岸で、見張り役の酒店をやっている朱貴しゅき兄哥あにきにこした者はありません。朱貴も沂水きすい県の生れで、李逵りきとは同じ在所の出ですからね」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兄哥あにきを頼みましょう、お迎え申して、)
縛るつもりで来たのじゃない、——三輪の兄哥あにきが縛ったのは何かの間違いだろう。お内儀かみさんに、あまり心配しないようにって言うんだよ
「よかったなあ、せっかく、ご案内してきても、どうかと思ってたンだが。……ところで兄哥あにき
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「平次兄哥あにき、面目次第もない。何もかもお品から聞いたが、狸囃子の曲者を挙げさせた指金は、兄哥がやってくれたんだってネ」
「おいッ、兄哥あにき、何をばかな真似をするのだ、あぶねえじゃねえか」普請場ふしんばの方で、このていを見て飛んできた、仲間の大工の一人だった。うしろから平次郎に組みついて
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「たいそう機嫌の悪い虫だね。じゃ、三輪の兄哥あにきがびっくりするような手柄を立ててよ、お神楽かぐらの清吉が目を廻すような女房を貰うんだね」
銭形平次捕物控:124 唖娘 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
親分の下に兄哥あにきがあり、兄哥の下に乾児こぶんがあり、その乾児のうちにも古参新参の区別がやかましく、他の客分格だの、仲間の礼儀作法も、誰が立てたともなく、非常に厳密であった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
石原いしはら兄哥あにきの縄張だが、利助兄哥はあのとおり身体が悪くて、娘のおしなさんが代って仕事をしている有様だから、どうすることも出来ない。
張順の体を船ベリに抑えつけて「——縁もゆかりもねえ野郎に、なんで、得もねえ親切気など出すものかよ。……だが兄哥あにき、こんな薄野呂うすのろにしちゃあ、存外な大金を持ッてたものだな」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ほかにお駒を殺す者はなし、こんな弱ったことがない。どう考えても解らないから、兄哥あにきへ智恵を借りに来たんだが、——どうしたものだろう
「なにが弱る。雲長というおとこは、武人のくせに、金に困らぬやつだ。雲長はおれの兄哥あにきだ。弟の張飛が飲んで行ったといえば、払わぬわけにはゆくまい。——おいっ、もう一杯ついでこい」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それももっともだが、ね、兄哥あにき、どんな証拠があるにしても、伝吉は人を殺すような人間には見えないが、どういうものだろう」
兄哥あにき。……何もそう俺はとがっているんじゃねえ。おめえの枕元で、あんな話をしたというのも、これや矢張やっぱり、おめえにも運があったと云うもんだ、どうだ。この仕事は、のりで行こうじゃねえか』
魚紋 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どこをどう突ついて、どう手繰たぐったものか、まるっきり見当が付かない。気の毒だが兄哥あにきの智恵を貸してくれないか、恩に着るつもりだが——
兄哥あにき、これやホンの少しだけれど」
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「本所は石原の兄哥あにきの繩張りだ、頼まれたつて俺の出る幕ぢやねえ。それに、石原の兄哥にケチなんぞ付けやがつて」
それあ、兄哥あにきのいうとおりだ。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「届出は頓死とんしだが、——あの辺は石原いしはらの利助兄哥あにきの縄張内だ。昼頃変な小僧が手紙を持って来たんだそうで、おしなさんが持って来て見せてくれたよ」
「菰の兄哥あにきこれやあ何だい」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
してくれ、今晩は帰らないかも知れないから、ガラッ八の野郎が来たら石原の兄哥あにきの家へ来るようにって言っておくれ
「銭形の、——気の毒だが、兄哥あにき満更まんざら掛り合いがないわけでもあるまい。少し乗出して智恵を貸しちゃ貰えまいか」
見るとうなるぢやないか。——あの通りだよ、三つまた兄哥あにき。目白までつれて行つたところで、大した役には立つまい
「本所は石原の兄哥あにきの縄張だ、頼まれたって俺の出る幕じゃねえ。それに、石原の兄哥にケチなんぞ付けやがって」
「それ位のことなら、眞砂町の兄哥あにきの前だが、蓋も底もあるまい。俺なんか顏を出す幕ぢやないやうに思ふが——」
「三輪の兄哥あにきがお島を縛ったそうですから、私のところへ金をほうり込むのはお島じゃございません。今晩十五両投り込んだのは、何よりの証拠で——」
「いや、さうでないよ兄哥あにき、俺は一つ、明日は狸狩りをやらうと思ふんだが、若い者を少し貸して貰へるだらうネ」
「金は盜んだが、兄哥あにきは殺さなかつた——とでも言ふんだらう。そんな言ひ譯は通用しねえ。さア刃物を何處へ隱した。そいつを聽かうぢやないか、え?」
「金は盗んだが、兄哥あにきは殺さなかった——とでも言うんだろう。そんな言い訳は通用しねえ。さア刃物をどこへ隠した。そいつを聴こうじゃないか、え?」
「佐吉兄哥あにき、——俺も解った心算つもりだが、どうもに落ちないことがある。一と晩よく考えて、明日の巳刻よつ(十時)過ぎに、またここで逢うことにしようか」
「三輪の兄哥あにきが乗り出して、金五郎を縛って行ったのは、いずれ動きのとれない証拠があってのことだろう」
「八と喜八兄哥あにきは此處で待つてゐてくれ。入る奴を縛つちやいけない、出る奴を縛るんだ。誰でも構はない」
「いや、手前てめえは叔母さんをつれて石原の兄哥あにきのところへ行ってくれ、それからまた引返すんだ——物置の後ろに隠し木戸がある、内からなら楽に開けられる」
「飛んでも無い、旦那は兄哥あにきの腕を褒めて居なさるよ、年は取つても、金六のやうにあり度いものだつて」
「とんでもない、旦那は兄哥あにきの腕を褒めていなさるよ、年は取っても、金六のようにありたいものだって」
落合の兄哥あにきに遠慮して、土地の若い男は、門並かどなみ御遠慮申上げているんだ。お菊にれただけの男なら、一束ひとたばや二束はあるが、お菊を手に入れたのは手前だけよ。
石原いしはら兄哥あにきのところの、おしなさんに、済まねえがちょいとここへ来て下さるようにってそう言ってくれ」