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低徊
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ていかい
ふりがな文庫
“
低徊
(
ていかい
)” の例文
ハイドンの『四重奏曲(作品三の五)』をたった一枚に吹き込むほど、
低徊
(
ていかい
)
趣味や詠歎趣味に遠ざかった人たちであったのである。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
彼女は夢のような幼い時の思出などに
耽
(
ふけ
)
りながら、一時間にも近い間、父母の墓石の辺に
低徊
(
ていかい
)
していることがあった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
低徊
(
ていかい
)
去るあたわず、静かにさまざまの感想にふけったものであるが、今またこの物語を草して機械のことに及ぶに当たり、ゆくりなくも当時を追懐して
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
一歩渦巻にまき込まれてしまえば、
那落
(
ならく
)
までは一息。その途中に思索や反省や
低徊
(
ていかい
)
のひまはない。
臆病
(
おくびょう
)
な悟浄よ。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
私は春琴女の墓前に
跪
(
ひざまず
)
いて
恭
(
うやうや
)
しく礼をした後検校の墓石に手をかけてその石の頭を
愛撫
(
あいぶ
)
しながら夕日が大市街のかなたに
沈
(
しず
)
んでしまうまで丘の上に
低徊
(
ていかい
)
していた
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
時はすでに遠く過ぎ去っていることも
解
(
わか
)
っていたが、それだけに
低徊
(
ていかい
)
の情も断ち切りがたいものであった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
かく思い定めたれども、渠の良心はけっしてこれを
可
(
ゆる
)
さざりき。渠の心は激動して、渠の身は波に
盪
(
ゆら
)
るる
小舟
(
おぶね
)
のごとく、安んじかねて行きつ、
還
(
もど
)
りつ、塀ぎわに
低徊
(
ていかい
)
せり。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ましてあの
低徊
(
ていかい
)
的な物語的な趣味がその美を左右するのではない。この世界には感傷もなく夢幻もない。それは現実に当面する課せられた仕事である。そこには
廃頽
(
はいたい
)
の暇はない。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
雑草の生える
埋立地
(
うめたてち
)
で、詩人の心を
低徊
(
ていかい
)
させ、人間生活の廃跡に対する或る種の物侘しい、人なつかしい、晩春の
日和
(
ひより
)
のような、アンニュイに似た孤独の詩情を抱かせるのである。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
われらが土に葬られる時、われらの墓辺を、悲しみに沈んで
低徊
(
ていかい
)
するものは花である。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
司馬懿は、
低徊
(
ていかい
)
久しゅうして、在りし日の孔明を
偲
(
しの
)
びながら、独りこう
呟
(
つぶや
)
いたという。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そうして、この門の上へ持って来て、犬のように棄てられてしまうばかりである。選ばないとすれば——下人の考えは、何度も同じ道を
低徊
(
ていかい
)
した
揚句
(
あげく
)
に、やっとこの局所へ
逢着
(
ほうちゃく
)
した。
羅生門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
女性の頭脳は遠い昔において或進化の途中に
低徊
(
ていかい
)
したまま今日に到った観がある。
鏡心灯語 抄
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
自分の心象を綴るに
恋々
(
れんれん
)
としている私の心をもう押えることは止めにしましょう。
低徊
(
ていかい
)
逡巡
(
しゅんじゅん
)
する筆先は
反
(
かえ
)
って私の真相をお伝えするでしょう。
調
(
ととの
)
わぬ行文はそのまま調わぬ私の心の有様です。
聖アンデルセン
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
高いところで、見るともなしに見ているお角の耳へは、無論この二人の問答は入りませんが、満地の
墓碣
(
ぼけつ
)
の間にただ二人だけが、
低徊
(
ていかい
)
して去りやらぬ姿は、手に取るように見えるのであります。
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ひとつの
低徊
(
ていかい
)
——たしかに人生の中のひとつの低徊だった。そしてその時ほど人生のことがはっきりと私の胸に浮んで来ることはなかった。それは平生とて人間や人生のことを考えないのではない。
日本橋附近
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
峰吉がとしよりだったから、こんなところを
低徊
(
ていかい
)
していたのかも知れないし、一方から言えば年寄りなればこそ、そうして副小頭なればこそ、ここを一つぐっと押さえることが出来たのかも知れない。
舞馬
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
黒羽二重の
紋着
(
もんつき
)
、
萌黄
(
もえぎ
)
の
袴
(
はかま
)
、
臘鞘
(
ろざや
)
の大小にて、姫川
図書之助
(
ずしょのすけ
)
登場。唄をききつつ
低徊
(
ていかい
)
し、天井を仰ぎ、廻廊を
窺
(
うかが
)
い、やがて
燈
(
ともしび
)
の影を
視
(
み
)
て、やや驚く。ついで
几帳
(
きちょう
)
を認む。彼が
入
(
い
)
るべき
方
(
かた
)
に几帳を立つ。
天守物語
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
呂布は、狂いまわる駒と共に、
低徊
(
ていかい
)
してそこを去らなかった。
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「……ああ」と、
低徊
(
ていかい
)
しながら、頬に涙さえながした。
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
低
常用漢字
小4
部首:⼈
7画
徊
漢検1級
部首:⼻
9画
“低徊”で始まる語句
低徊趣味
低徊踟蹰
低徊拍掌