もって)” の例文
去春白井備後守を差下さしくだし如此之案紙かくのごときのあんしもって、誓紙を沙汰し、入魂じっこんいたすべき旨仰せけるに因って、書き上げたる旨を、石田治部少輔を経て言上ごんじょうに及び
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
なおもって彼の草稿そうこう極秘ごくひに致し置、今日に至るまで二、三親友の外へは誰れにも見せ不申候もうさずそうろう是亦これまた乍序ついでながら申上候もうしあげそうろう。以上。
彼等の記録に、「今夕こんせき討死、きずを蒙る輩数を知らず。もっての外のことなり。之を為すこと如何」と放心の状である。
四条畷の戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
我等われら今度こんど下向候処げこうそろところ其方そのほうたい不束之筋有之ふつつかのすじこれあり馬附之荷物積所うまつけのにもつつみしょ出来申候しゅったいもうしそろつき逸々はやばや談志之旨だんしのむね尤之次第もっとものしだいおおきに及迷惑申候めいわくをおよぼしもうしそろよっ御本陣衆ごほんじんしゅうもって詫入わびいり酒代さかて差出申候さしだしもうしそろ仍而件如よってくだんのごとし
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
トいってまだ年端としはも往かぬに、ことにはなまよみの甲斐なき婦人おんなの身でいながら、入塾などとはもっての外、トサ一旦いったんは親の威光で叱り付けては見たが、例の絶食に腹をすか
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
せつ云、景気の句世間容易にする、もってほかの事也。大事の物也。連歌に景曲といい、いにしへの宗匠深くつつしみ一代一両句にはすぎず。景気の句初心まねよき故深くいましめり。
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
これ/\昔馴染とはなんの事だ、屋敷にいる時は手前の親を引立ひきたってやった事はあるが、恩を受けたことは少しもない、それを昔馴染などとはもってほかのことだ、一切いっせつ出来ません