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五階
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ごかい
翌朝、
棟の
雲の
切れ
間を
仰いで、
勇ましく
天守に
昇ると、
四階目を
上切つた、
五階の
口で、フト
暗い
中に、
金色の
光を
放つ、
爛々たる
眼を
見た
声が
籠つて
空へ
響くか、
天井の
上——
五階のあたりで、
多人数のわや/\もの
言ふ
声を
聞きながら、
積日の
辛労と
安心した
気抜けの
所為で、
其まゝ
前後不覚と
成つた。……
唯見ると、
渡過ぐる
一方の
岸は、
目の
下に
深い
溪河——
即ち
摺上川——の
崖に
臨んで、づらりと
並んだ
温泉の
宿の
幾軒々々、
盡く
皆其の
裏ばかりが……
三階どころでない、
五階七階に、
座敷を
重ね