不細工ぶさいく)” の例文
左手の前方には、墨黒々と不細工ぶさいくな書院風の窓が描かれ、同じ色の文机ふづくえが、そのそばに角度を無視した描き方で、据えてあった。
押絵と旅する男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
シカシ僕ニハマタ、ソノナヨナヨトシテ締マリノナイ体ツキ、不細工ぶさいくゆがンデイル脚ノ曲線ガ変ニナマメカシク感ジラレタヿモ事実デアル。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
手製のアスベストスの棒に針金をきつけて、それを不細工ぶさいくな歯車か何かにとりつけた妙な装置が出来上った。
みんなの視線が、鉄格子てつごうしのはまった、謹慎室きんしんしつの小さな窓のほうへ昇って行った。不細工ぶさいくな、野蛮な、にんじんの顔がのぞいている。彼はしかめっつらをしてみせた。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
かわらのようなあつい、不細工ぶさいくものあいだに、このかみのようにうすい、しかも高貴こうき陶器とうきがいっしょになっているということは、なんというこころないことでありましょう?
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「——な、見えますやろ。どえらい不細工ぶさいくな倉庫か病院かというような灰色の建物が見えまっしゃろ」
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
普通人の生活で言えば、手織物と称する不細工ぶさいくでしかも丈夫な織物は、都会ではほとんと影をおさめて、いわゆる紡績の糸で織ったつやのある木綿ばかりが、田舎いなかへまでも行き渡っている。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
大佐たいさ好遇かうぐうにて、此處こゝで、吾等われら水兵等すいへいらはこんで珈琲カフヒーのどうるほうし、漂流へうりう以來いらいおほい渇望かつぼうしてつた葉卷煙葉はまきたばこ充分じゆうぶんひ、また料理方れうりかた水兵すいへい手製てせいよしで、きはめてかたち不細工ぶさいくではあるが
足には靴下もはかず、そこにあった一足の不細工ぶさいくな木靴をつっかけたままです。そうしてできあがった変装は、西洋の童話にある魔法使いのおばあさんそっくりでした。
妖怪博士 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)