下路したみち)” の例文
折々きこゆるは河鹿かじか啼声なきごえばかり、只今では道路みちがこう西の山根から致しまして、下路したみちの方の川岸かしへ附きましたから五六町でかれますが
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
級長である彼は掃除番の監督を早くすまして、桜の並樹の下路したみちを校門の方へ急いで来ると、門際で誰かが言いあっていた。
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
露店の目は、言合わせたように、きょときょとと夢に辿たどる、この桃の下路したみちくような行列に集まった。
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
葉洩はもりのかげ散斑ばらふなるただすもり下路したみち
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
はじめのうち、……うをびくなか途中とちゆうえた。荻尾花道をぎをばなみち下路したみち茄子畠なすびばたけあぜ籔畳やぶだゝみ丸木橋まるきばし、……じやうぬますなどつて、老爺ぢゞい小家こやかへ途中とちゆうには、あなもあり、ほこらもあり、つかもある。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
風が身に染むので心着けば、樹蔭こかげなるがけの腹から二頭の竜の、二条の氷柱を吐く末が百筋ももすじに乱れて、どッと池へそそぐのは、熊野の野社のやしろ千歳経ちとせふる杉の林を頂いた、十二社の滝の下路したみちである。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこをくぐって、あたりを見ながら、芝生をひろって、こずえの揃った若木のかえで下路したみちを、枯れたが白銀しろがねへりを残した、美しい小笹おざさを分けつつ、やがて、つちも笹も梢も、向うへ、たらたらと高くなる
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)