一杯ひとつ)” の例文
「どうだね、一杯ひとつ」と、西宮は猪口をさした。吉里は受けてついでもらッて口へ附けようとした時、あいにく涙は猪口へ波紋をつくッた。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
「失礼をするかも知れないが、まあ、一杯ひとつ。ああ、——ちょうどお銚子が来た。女中ねえさん、お酌をしてあげて下さい。」
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
恐しく鳴り渡るにつれて、『どうだ、君一杯ひとつ。』の叫声、手もとゞかぬテーブルの、彼方かなた此方こなた酒杯さかづきの取り遣り。
一月一日 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「まアまあ、そのようなお堅いことは」と、如海は収めながらも、すぐ一方で「どうぞ、今日はごゆるり遊ばして。さ、いかがです、おじいさん、もう一杯ひとつ
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その度、吉野に来て一杯ひとつ飲めと加藤の言伝ことづてを伝へた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「まあ、あんなことを——も一杯ひとつあげましょうか」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「まず! 一杯ひとつ!」
旧聞日本橋:17 牢屋の原 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
ねぎや、豆府はまだしも、糸菎蒻しらたきだと思って下さいましね。お腹が冷たくなるんですから……お酒はあります。あ、私にも飲まして頂載。もう一杯ひとつもっとさ。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『はや、たそがれ。あいにく、妻が出ているが、まあ、めしでも食って行ってくれ。祝いだ。神酒みきも、一杯ひとつ
「もう言わない、言わない。仲直りにお茶を一杯ひとつ。湯が沸いてるなら、濃くして頼むよ」
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
「さあ。(あたりを忍び目、カーテンばかり。)ちょっと一杯ひとつぐらい……お盃洗がなくて不可いけませんわね。」
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「何か、みやげがあるだろう。それまで、飲んでいるとするか。……親分も、どうです。お一杯ひとつ
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一杯ひとつ受けてもらいたいものですな。こうして飲んでいたッて——一人で飲むという奴は、どうもさみしくッて、何だか飲んでるような気がしなくッていけないものだ。一杯ひとつ受けてもらいたいものですな。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
まだんだまゝの雜具ざふぐ繪屏風ゑびやうぶしきつてある、さあお一杯ひとつ女中ねえさんで、羅綾らりようたもとなんぞはもとよりない。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「いや来ている。いま会わせるよ。……が、まずしずかな景だ。一杯ひとつ、息やすめに飲まないか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「はははは、真面目まじめになるな、真面目になるな、ぐッとまた一杯ひとつ景気をつけて、さあ、此方方こなたかた楽屋うちとなって考えると面白い、馬鹿に気に入った、痛快ということだ。」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「まあ、やっぱりお袖さんだったね。ほんに、久しぶりじゃないか。ま、一杯ひとつおあがりな」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いたく身に染みた様子であった、金之助は改めて硝子杯コップを挙げ、「もう一杯ひとつ景気をつけよう、大分引込まれて私まで妙になった、お前にも似合わない何もふさぐにも当るまい、」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一杯ひとつぐれいは、おれにだって、廻してよこしたって、冥利みょうりは悪くねえだろう。四国屋のお内儀と弦之丞が話をしていたという種を、いったい、誰がおろしてやったと心得ているんだ。恩を
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まあまあ一杯ひとつ。——弱ったな、どうも、つぐみを鍋でと言って、……その何ですよ。」
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そうだ。さっそく、若御料わかごりょうをこれへ呼んでしんぜよう。……そのあいだ、まず一こんまいるがよい。これは鶴ヶ岡の神酒みき、きのう、全軍の将士へ勝ち祝いとしてけたものよ。まず一杯ひとつまいれ」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いや、いつかの間淵の話じゃないが、蟻の細工までにも到らない、箸けずりの木彫屋が、余五将軍をのみなかまに引込んだ処は、私も余程よっぽど酔いました。——ま、ま、あなたへ、一杯ひとつ
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「さ、どうぞお一杯ひとつ。そして心からおくつろぎくださいまして」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まあお一杯ひとつ。……お銚子が冷めますから、ここでおかんを。ぶしつけですけれど、途中が遠うございますから、おかわりの分も、」と銚子を二本。行届いた小取まわしで、大びけすぎの小酒こざかもり。
鷭狩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そちらのお武家様、お一杯ひとつ、頂戴いたしましょうか」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そっちの、そっちの熱い方を。——もう一杯ひとつ、もう一ツ。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そうだろう。さ、いでくれ。おまえも一杯ひとつ……」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あらためて、一杯ひとつ、お知己ちかづきに差上げましょう。」
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いやいや、構わん」と、一杯ひとつうけて
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お一杯ひとつくらいはよいでしょう」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どうじゃな、もうお一杯ひとつ
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どうだ。おまえも一杯ひとつ
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
正成も、一杯ひとつ、ふくんで。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「朱実、一杯ひとつゆこう」
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「も一杯ひとつ
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)