-
トップ
>
-
やけだ
焼出されが荷を
担いで逃げ様とする、
向からお町奉行が出馬に成る、
此方の曲角からお使番が馬で来る、
彼方から弥次馬が来る、馬だらけに成りますが
当時飛鳥も
落ちると
言ふ、お
妾が
一人乗つて
出たが、
船の
焼出したのは、
主が
見さしつた
通りでがす。——
其の
妾と
言ふのが、
祖父殿の
許嫁で
有つたとも
言へば、
馴染だとも
風説したゞね。
殆ど、
五分置き
六分置きに
搖返す
地震を
恐れ、また
火を
避け、はかなく
燒出された
人々などが、おもひおもひに、
急難、
危厄を
逃げのびた、
四谷見附そと、
新公園の
内外、
幾千萬の
群集は
不思議に
窓の
空所へ
橋に
掛つた
襖を
傳つて、
上りざまに
屋根へ
出て、それから
山王樣の
山へ
逃上つたが、
其處も
火に
追はれて
逃るゝ
途中、おなじ
難に
逢つて
燒出されたため、
道傍に
落ちて
居た