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くわいわ
平凡な
會話じやアないか。
平常なら
當然の
挨拶だ。
併し
自分は
友と
別れて
電車に
乘つた
後でも
氣持がすが/\して
清涼劑を
飮んだやうな
氣がした。
(
美津、
下駄を
買うてやるか。)と
言つて
見たが、
默つて
返事をしなかつた。
貞淑なる
細君は、
其の
品位を
保つこと、
恰も
大籬の
遊女の
如く、
廊下で
會話を
交へるのは、
仂ないと
思つたのであらう。
二人の
会話は双方共意味を
成さないで、途中で
切れた。それなりで、又小半町程
来た。
今度は女から話し
掛けた。
父は
乾いた
会話に
色彩を
添へるため、やがて
好きな方面の問題に
触れて見た。所が
一二言で、高木はさう云ふ
事に
丸で無頓着な男であるといふ事が
分つた。
父は老巧の
人だから、すぐ退却した。