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くろ/″\
墨黒々と
書かれた『
多田院御用』の
木札を
立てて
來られると、
船頭はまた
舟を
返さないわけに
行かなかつた。
『
武村、
怪しからんな、
我軍艦「
日の
出」の
道塲破りをやつたな、よし、
乃公が
相手にならう。』と
突然大檣の
影から
現はれて
來たのは、
色の
黒々とした、
筋骨の
逞ましい
年少少尉
ロミオ
他のと
較ぶれば
彌〻彼女をば
絶美ぢゃと
言はねばならぬことになる。
美人の
額に
觸るゝ
彼の
幸福な
假面どもは、
孰れも
黒々と
製ってはあれど、それが
却って
其底の
白い
面を
思出さする。
現はれ
來つた
二個の
人は
紛ふ
方なき
日本人で、
一人は
色の
黒々とした
筋骨の
逞ましい
水兵の
姿、
腰に
大刀を
横へたるが、キツと
此方を
眺めた、
他の
一人は、
威風凛々たる
帝國海軍士官の
服裝