-
トップ
>
-
かんがへこ
初めの
壜は
二人共無言の
行で
呑乾して
了ふ。
院長は
考込んでゐる、ミハイル、アウエリヤヌヰチは
何か
面白い
話を
爲やうとして、
愉快さうになつてゐる。
此の
日も
周三は、
畫架に
向ツて、
何やらボンヤリ
考込むでゐた。モデルに
使ツてゐる
彼の
所謂『
平民の
娘』は、
小一
時間も
前に
歸ツて
行ツたといふに、周三は
尚だ畫架の前を
動かずに考へてゐる。
落語の
濫觴は、
昔時狂歌師が
狂歌の
開の
時に、
互に手を
束ねてツクネンと
考込んで
居つては
気が
屈します、
乃で
其合間に世の中の
雑談を
互に語り
合うて、一
時の
鬱を
遣つたのが
濫觴でござります。
患者は
多いのに
時間は
少ない、で、
毎も
極く
簡單な
質問と、
塗藥か、
※麻子油位の
藥を
渡して
遣るのに
留まつてゐる。
院長は
片手で
頬杖を
突きながら
考込んで、
唯機械的に
質問を
掛けるのみである。