“おもいで”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
思出47.4%
追憶15.8%
憶出13.2%
想出7.9%
追懐5.3%
記憶2.6%
囘憶2.6%
回想2.6%
紀念2.6%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
かれこれとかたっているうちにも、おたがいこころ次第しだい次第しだいって、さながらあの思出おもいでおお三浦みうらやかたで、主人あるじび、つまばれて
城太郎のこと、お通のこと、さまざまな追憶おもいでに、しばらくつかれを忘れて歩いていたが、道はいよいよ分らない。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二人は思わず、小供時代の憶出おもいでに耽った、丈なす雑草が私達の上に森の如くにひろがる時、私達は小鬼エルフィンの踊るを見るようなちょっと冒険的な気持になる、二人はそんな気持にも浸るのであった。
それにしても、たった一つの最初の想出おもいでがあった。あとにもさきにもない、一度きりの、しき縁ではあった。
蕎麦の花の頃 (新字新仮名) / 李孝石(著)
それからそれへと思いめぐらして、追懐おもいではいつしか昔の悲しい、いたましい母子おやこの生活の上にうつったのである。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
お隅は顔を外向そむけて、嗚咽すすりあげました。一旦なおりかかった胸の傷口が復た破れて、烈しく出血するとはこの思いです。残酷な一生の記憶おもいでは蛇のように蘇生いきかえりました。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
刈取らずに置いた蕎麦の素枯すがれに月の光の沈んだ有様を見ると、楽しい記憶おもいでが母親の胸の中を往ったり来たりせずにはおりません。母親は夢のようにながめて幾度か深い歎息ためいきを吐きました。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いわゆる囘憶おもいでというものは人を喜ばせるものだが、時にまた、人をして寂寞せきばくたらしむるを免れないもので、精神たましい縷糸いとすでに逝ける淋しき時世になお引かれているのはどういうわけか。
「吶喊」原序 (新字新仮名) / 魯迅(著)
熱い空気に蒸される林檎の可憐らしい花、その周囲を飛ぶ蜜蜂の楽しい羽音、すべて、見るもの聞くものは回想おもいでのなかだちであったのである。
朝飯 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
蓮華げんげ鷺草さぎそう、きんぽうげ、鍬形草くわがたそう、暮春の花はちょうど絵具箱を投げ出したように、曲りくねった野路を飾って、久しい紀念おもいでの夕日が岡は、遠く出島のように、メリヤス会社のところに尽きている。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)