憶出おもいで)” の例文
その折諸君のまちまちの憶出おもいでを補うために故人の一生の輪廓を描いて巻後に附載したが、草卒の際序述しばしば先後し、かつ故人を追懐する感慨に失して無用の冗句をかさ
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
二人は思わず、小供時代の憶出おもいでに耽った、丈なす雑草が私達の上に森の如くにひろがる時、私達は小鬼エルフィンの踊るを見るようなちょっと冒険的な気持になる、二人はそんな気持にも浸るのであった。
事業家としてドレほどの手腕があったかは疑問であるが、事をともにした人の憶出おもいでを綜合して見ると相当の策もあり腕もあったらしく、万更まんざらな講釈屋ばかりでもなかったようだ。
二葉亭追録 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
と、病み衰えた顔に淋しい微笑を浮べ、梶棒かじぼうの上ると共に互に黙礼をかわしてわかれた。暫らくは涙ぐましく俥の跡を目送みおくったが、これが紅葉と私との最後の憶出おもいでの深い会見であった。
この憶出おもいでを語る前に順序として私自身の事を少しくいわねばならない。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)