想出おもいで)” の例文
フランシスはやがて自分のまとったマントや手に持つしゃくに気がつくと、はじめて今までふけっていた歓楽の想出おもいでの糸口が見つかったように苦笑いをした。
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
それにしても、たった一つの最初の想出おもいでがあった。あとにもさきにもない、一度きりの、しき縁ではあった。
蕎麦の花の頃 (新字新仮名) / 李孝石(著)
現在のことは実際彼女に取っては何の想出おもいでの種ともならない。——わたしは前にも言ったが、彼女は感じの鈍い女だ。感じの鈍い女に何の想出があろう。ただこの部屋は非常に静かだ。非常に大きい。
明日 (新字新仮名) / 魯迅(著)