ひょう
月見山で電車を下りると、いつもひっそりしている道の上に、ざわざわと人の動くのが見えた。正三はべつに気にもとめず、山手のほうへ大股に登っていくと、空地の角にある音楽家の住居で、近所から薔薇屋敷と呼ばれている邸の門前にも、音楽家の若い妻君を中心 …