なく)” の例文
こまかきあめははら/\とおとして草村くさむらがくれなくこほろぎのふしをもみださず、かぜひとしきりさつふりくるはにばかりかゝるかといたまし。
雨の夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
不図ふと、鳥のなくがする。……いかにも優しい、しおらしい声で、きりきり、きりりりり。
海の使者 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
能考へ置と云ばお節は彌々いよ/\打喜びまことに何から何まで厚い御世話有難う御座りますと言けるが終夜よもすがらも遣らず心せくまゝ一番どりなくや否や起出つゝ支度調へ藤八諸共もろともあけ寅刻比なゝつごろより宿屋を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
口に當ると思ふトにはとりなくをなす其の妙なること二三度は誠のとりと聞捨て四五度目に至り怪しや人家なき此の山中にと氣付きて始めて此男のいたづらと知りしなり東京に猫八とて犬猫よりとり烏の眞似を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
なんでもあいつは。十五日朝はなれて母牛の乳を一廻残らず飲みましてそれからなくのです。ですからあれは母牛の乳をまだのみたがってなくのでしょうと男等はった。日くれになってもまだ鳴いている。
牛舎の日記 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
雉子きじなくや川の向ひの小松原 楚舟
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
こまかき雨ははら/\と音して草村くさむらがくれなくこほろぎのふしをも乱さず、風ひとしきりさつふりくるは、あの葉にばかりかかるかといたまし。
あきあはせ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なく雉子きぎす微雨に麦の茎立ぬ 鷺雪
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
「さにはあるまじ。いかで山がらすをさはおもふべき。あのなくね聞き給へ、よもあやまらじ」と不審いぶかしうなりて言へば
すゞろごと (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)