鳴神なるかみ)” の例文
鳴神なるかみおどろおどろしく、はためき渡りたるその刹那せつなに、初声うぶこえあがりて、さしもぼんくつがえさんばかりの大雨もたちまちにしてあがりぬ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
「君公庁おおやけに召され給うと聞きしより、かねてあわれをかけつる隣のおきなをかたらい、とみに野らなる宿やどのさまをこしらえ、我をとらんずときに鳴神なるかみ響かせしは、まろやが計較たばかりつるなり」
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
鳴神なるかみのおとの絶間たえまには、おそろしき天気におくれたりとも見えぬ「ナハチガル」鳥の、玲瓏れいろうたる声振りたててしばなけるは、淋しき路をひとりゆく人の、ことさらに歌うたふたぐいにや。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
噂のあつた古い歌舞伎の『鳴神なるかみ』をも初めて見物して來た。ちやうど幕合の廊下で、石井柏亭君や有島生馬君に逢つて、わたしたちはあの『鳴神』の面白さに就いて語り合つた。
桃の雫 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
公庁おほやけに召され給ふと聞きしより、かねてあはれをかけつる隣のおきなをかたらひ、とみ二三四野らなる宿のさまをこしらへし。我をとらんずときに鳴神なるかみひびかせしは、まろやが二三五計較たばかりつるなり。
げに思ひいづ、鳴神なるかみの都の騷擾さやぎ村肝むらぎもの心のきずを。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
急げ 夕立がくる 鳴神なるかみは隈取りをして
立秋 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
鳴神なるかみの鳴るごと、渡津海のとよむごと
鳴神なるかみのしづまる雲や天の川 桃鯉
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
然るに分娩ぶんべんさいは非常なる難産にして苦悶二昼夜にわたり、医師の手術によらずば、分娩ぶんべん覚束おぼつかなしなど人々立騒たちさわげる折しも、あたかも陣痛起りて、それと同時に大雨たいうしのみだしかけ、鳴神なるかみおどろ/\しく
母となる (新字旧仮名) / 福田英子(著)
げに思ひいづ、鳴神なるかみの都の騒擾さやぎ村肝むらぎもの心のきずを。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
鳴神なるかみの落ちかゝるごと
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)