高下こうげ)” の例文
お母さんは芸人の子だからといって恥じることはっともないと教えた。商売家業は何でも同じこと、同じことは一つことで、高下こうげがないと言った。
心のアンテナ (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
むろん人間にんげんには、賢愚けんぐ善悪ぜんあく大小だいしょう高下こうげ、さまざまの等差とうさがあるので、仏教ぶっきょう方便ほうべん穴勝あながちわるいものでもなく、まよいのふかものわかりのわるいものには
しかるに我が国民間に於ける手形交換の現況果して如何どうだかは、諸君の熟知せらるところ、また以て我が国民性格の高下こうげぼくするに足るではありませんか。
国民教育の複本位 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
少なくともその貯蔵の酒には品質の高下こうげがあって、奈良とか河内かわち天野あまのとか、い酒ができると、その評判が高くなり、人がその名を聴いて飲んでみたがるようになった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
兎角、さればと言いて頬ひげをなでたり。これにて高下こうげしるしあらわれたり。そのうえ兎角お城に向かいて剣をふる。いかで勝つことを得ん。これ運命のぐる前表也と——。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
西洋では色々区別があって直段ねだん高下こうげはその大小によらずして品質の良否によるそうです。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
値の高下こうげや、そんなことを論ずるのはそもそも末で、どんな粗製の今戸焼でもどこかに可愛らしいとか面白いとかいう点を発見したならば、連れて帰って可愛がってやることです。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
よしさりとも、ひとたび同胞はらから睦合むつみあへりし身の、弊衣へいいひるがへして道にひ、流車を駆りて富におごれる高下こうげ差別しやべつおのづかしゆ有りてせるに似たる如此かくのごときを、彼等は更に更にゆめみざりしなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
考えると、踊にも高下こうげがある。それは踊る人の気品によるのだ。すぐれた気品は表現以上の心法しんぽう鍛錬たんれんから来る。つまりは内から映発するのだ。奥の奥の人柄の香気だ。芸は道なり。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
だによって労力の高下こうげでは報酬の多寡たかはきまらない。金銭の分配は支配されておらん。したがって金のあるものが高尚な労力をしたとは限らない。換言すれば金があるから人間が高尚だとは云えない。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
美作には何々高下こうげという大字・小字が多い。妙な地名である。その二三の例を挙げれば
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
もとよりその歌の高下こうげを判ずるわけにはいかないが、この乙女の世にたぐいなき顔かたちと、そのさかしげな物の言い振りとを併せて考えると、師道の胸には一種の興味が湧いてきた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
工学者が好まれる事もあり、実業家が望まれる事もあります。これには決して可否を申す事が出来ません。職業に高下こうげ貴賤きせんの別がないと同様に良人にしてわるいという区別もありません。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
牛乳の良否よしあしと代価の高下こうげは国家問題です。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)