香氣にほひ)” の例文
新字:香気
木曾きそ檜木ひのき名所めいしよですから、あのうすいたけづりまして、かさんでかぶります。そのかさあたらしいのは、檜木ひのき香氣にほひがします。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
吾等われら上陸じやうりくしたへん自然しぜんまゝなる芝原しばゝら青々あをあをとして、其處此處そここゝに、れぬ紅白こうはくさま/″\のはな咲亂さきみだれて、みなみかぜがそよ/\とくたびに、りくからうみまでえならぬ香氣にほひおくるなど
眠らんとするにゆかしき香氣にほひ紛々ふん/\と鼻を撲ちて我ながら夢とも幻とも分かず。
花枕 (旧字旧仮名) / 正岡子規(著)
にぎりたてのおむすびが彼樣あうするとにくツつきませんし、そのはう香氣にほひぎながらおむすびをべるのはたのしみでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
何故といふに、田舍に居る身内のものから遠く離れた私には、左樣いふ草餅の香氣にほひなどを嗅ぐほど可懷なつかしい思をさせるものが有りませんでしたから。
その頃のことを思出すと海の見える座敷で海苔の香氣にほひを嗅いだことが私の幼い記憶に浮び揚つて來ます。
酒屋の香氣にほひのする庭を通り拔けて、藏造りになつた二階の部屋へ上つて見ました。隣とはよく往來ゆきゝをしましたが、そんなに奧の方まで連れられて行つたのは私には初めてです。
ところが新茶ぐらゐ香氣にほひがよくて、またそれの早く失はれ易いものもすくないかと思ふ。
短夜の頃 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
木曾きそ燒米やきごめといふものはあをいやわらかいいね香氣にほひがします。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)