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ちやうてん
然し
薄い
日の
光は
畑の
畝が
形づくつて
居る
長い
小山の
頂點を
越えて
幾らも
其の
力を
及ぼさなかつた。どの
畝でも
其陰は
依然として
白かつた。
ある
時はひそかに
過ぎた
春を
回顧して、あれが
己の
榮華の
頂點だつたんだと、
始めて
醒めた
眼に
遠い
霞を
眺める
事もあつた。
愈苦しくなつた
時
靜かな
空をぢり/\と
移つて
行く
日が
傾いたかと
思ふと一
散に
落ちはじめた。
冬の
日はもう
短い
頂點に
達して
居るのである。
勘次はまだ
日が
有るからといつて
鍬を
擔いで
麥畑へ
出た。