)” の例文
第三個は鼠色の大外套にくるまり、帽をまぶかに被りてついぢにりかゝりたるが、その身材みのたけはやゝ小く、へいを口にあてゝ酒飮み居たり。
「先ず好かった」と思った時、眩暈が強く起こったので、左の手で夜具葛籠を引き寄せて、それにり掛かった。そして深いゆるい息をいていた。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
従来不朽の筆は不朽の人を伝えるもので、人は文に依って伝えらる。つまり誰某たれそれは誰某にって伝えられるのであるから、次第にハッキリしなくなってくる。
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
ごうと音がして山のがことごとく鳴る。思わず顔を見合わす途端とたんに、机の上の一輪挿いちりんざしけた、椿つばきがふらふらと揺れる。「地震!」と小声で叫んだ女は、ひざくずして余の机にりかかる。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
見よ、サマリヤの婦人はゆびさし、基督は目して居玉ふなり。直ぐうしろなるエバルの山の山つゞきには、昔のスカル今のアスカルの三家村さんかそん山にりて白し。かめを忘れて婦人の急ぎ行く後影うしろかげを見よ。
見よ隴西ろうせいの諸郡から、長安へ行くには、かならず通らねばならぬ地勢にあることを、しかも、前は渭水いすいにのぞみ、うしろは斜谷にり、重畳の山、起伏する丘、また谷々の隠見する自然は
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人に見棄みすてられた家と、葉の落ち尽した木立こだちのある、広い庭とへ、沈黙が抜足をして尋ねて来る。その時エルリングはまた昂然として頭を挙げて、あの小家こいえの中のたくっているのであろう。
冬の王 (新字新仮名) / ハンス・ランド(著)
樊噲だって立派な将軍だが、「生きてすなはち噲等と伍を為す」と仕方が無しの苦笑をした韓信の笑には涙が催される。氏郷の書院柱にりかかって月に泣いた此の涙には片頬かたほえみが催されるではないか。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
神聖なクリストの恩を謝して、この椅子にっている2700
私は、蟻の這い廻る老いた幹に頭を
心の飛沫 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
石田は座布団を敷居の上に敷いて、柱にり掛かってひざを立てて、ポッケットから金天狗きんてんぐを出して一本吸い附けた。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
西関外せいかんがいの城の根元にる地面はもとからの官有地で、まんなかに一つゆがんだはすかけの細道がある。
(新字新仮名) / 魯迅(著)
かごランプのを浅く受けて、深さ三尺のとこなれば、古き画のそれと見分けのつかぬところに、あからさまならぬおもむきがある。「ここにも画が出来る」と柱にれる人が振り向きながらながめる。
一夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
用を足してしまって便所を出ようとしたとき、純一はおちゃらが廊下の柱にり掛かって立っているのを見た。そして何故なにゆえともなしに、びっくりした。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
やがて書記の川村がどうかお着席をと云うから、柱があってりかかるのに都合のいい所へすわった。海屋の懸物の前にたぬき羽織はおりはかまで着席すると、左に赤シャツが同じく羽織袴で陣取じんどった。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)