雲翳うんえい)” の例文
何の雲翳うんえいもなく、洋々たる前途の希望の光りに輝いていた居士は、これを嵐山清遊の時に見たのであったが、たとい病余の身であるにしても
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
春光嬉々として空に一点の雲翳うんえいなき意外の好天気と相成、明け放したる窓の晴心地に、壁上のベクリンが画幀ぐわていも常よりはいと鮮やかに見られ候。
渋民村より (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
個人としても国民としても自ら悪意や猜疑心さいぎしんを以て暗雲を立て、東西の方角までも朦朧もうろうたらしむるに代え、善意と友情によりて碧空ひきくう一点の雲翳うんえいを止めざる所まで昇るを要する。
東西相触れて (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「おつう支度したくしてろ、おれれてんから」勘次かんじ性急せいきふにおつぎをうながてた。大戸おほどかぎそとからけて三にんにはつたときつき雲翳うんえいとほざかつてしづかにかきうへかゝつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その相反する実にかくの如し。しこうしてその相反するは、則ち相得る所以ゆえんなるか。松陰曰く、「象山高く突兀とっこつたり、雲翳うんえい仰ぐべきこと難し。いずれの日にか天風起り、快望せん狻猊さんげいわだかまるを」
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
夕日がだんだん山のに入るに従って珊瑚の色は薄らいで黄金色となり、其色それもまたつかに薄らいで白銀しろがねの色となったかと思いますと、蒼空あおぞらぬぐうがごとく晴れ渡って一点の雲翳うんえいをも止めず
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
それ等は実に今日まで私の思い出を曇らせる雲翳うんえいだったのです
橡の花 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)