げき)” の例文
声をつらね筆をそろへて一斉いつせいに之を讒謗ざんばう攻撃していはく「軍国多事のげきに乗じて此事をなすづ売国の奸賊をちゆうして征露軍門の血祭ちまつりせざるべからず——」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
これには寄手の宋江軍もさんざんな目にあったのだが、そのうちに敵にはひとつの“げき”——つまり弱点——があることを知ったのが勝因だった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
姦言かんげんかざり、近事きんじり、時勢を窺伺きしし、便べんはしげきに投じ、冨貴ふうきを以て、志とす。これ利禄りろくう。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
後家康の氏真とげきあるや、更に小田原に赴き、北条氏政に仕ふ。氏政圓一をして撿挍けんげうたらしめんとして京師に赴かしむ。圓一三河を過ぐるや、家康延見して黄金を賜ふ。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
太史令はゆえあって弐師じし将軍とげきあり、遷が陵をめるのは、それによって、今度、陵に先立って出塞しゅっさいして功のなかった弐師将軍をおとしいれんがためであると言う者も出てきた。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
それに対して、わが君は静かに時運をながめ、江東の要害を固うして、河北の袁紹えんしょうと、鼎足ていそくの形をなし、おもむろに天下のげきをうかがっておられるのが上策です。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その略に曰く、太祖たいそ升遐しょうかしたまいておもわざりき大王と朝廷とげきあらんとは。臣おもえらく干戈かんかを動かすは和解にかずと。願わくは死を度外に置きて、親しく大王にまみえん。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
三族をちゅうし、その家を没するに、家たゞ図書数巻のみ。卓敬と道衍と、もとよりげきありしといえども、帝をして方孝孺ほうこうじゅを殺さゞらしめんとしたりし道衍にして、帝をして敬を殺さしめんとす。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)