陰陽いんよう)” の例文
王之臣おうししん補鍋ほかもって生計を為さんとして老補鍋ろうほかと称し、牛景先ぎゅうけいせん東湖樵夫とうこしょうふと称し、各々おのおの姓をうずめ名を変じて陰陽いんよう扈従こしょうせんとす。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ぜにげては陰陽いんようさだめる、——それがちょうど六度続いた。おれんはその穴銭の順序へ、心配そうな眼をそそいでいた。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
陰陽いんようの石をまつってあるほこらのそばで、ぴたりと足をとめた栄三郎が、与吉を返りみてこういい出すのが聞こえた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
陰陽いんようむすびは宇宙うちゅう万有ばんゆうってもれぬとうと御法則みのり、いかにたか神々かみがみとてもこの約束やくそくからはまぬがれない。ただその愛情あいじょうはどこまでもきよめられてかねばならぬ。
またようといえばよかれいんといえば気味悪く思うもあれども、はたして事物に陰陽いんようの差があるものならば、両者の間の差は性質の差にして善悪、曲直の差ではあるまい。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
どうすればって、占ないには陰陽いんようの理で大きな形が現われるだけだから、実地は各自めいめいがその場に臨んだ時、その大きな形に合わして考えるほかありませんが、まあこうです。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
つづみを合図に、両軍それぞれの大兵が、鶴翼かくよく鳥雲ちょううん水流すいりゅう車輪しゃりん陰陽いんよう三十六変の陣形さまざまに描いてみせ、最後にはわあああっ……と双方起って乱軍となり、そこかしこで
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
陰陽いんよう表裏ひょうり共に自家の利益りえき栄誉えいよを主張してほとんど至らざるところなく、そのこれを主張することいよいよ盛なる者に附するに忠君ちゅうくん愛国あいこく等の名を以てして、国民最上の美徳と称するこそ不思議なれ。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
彼の兵略戦法を語るに、六ちょうこうの術を附し、八門遁甲とんこうの鬼変を描写しているくだりなどはみなそうであるし、わけて天文気象に関わることは、みな中国の陰陽いんようぎょう星暦せいれきに拠ったものである。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
陣の中央はこれ天象てんしょうの太陽、すなわち、武田伊那丸の大将座、陰陽いんよう脇備わきぞなえ、畳備たたみぞなえ、旗本はたもと随臣ずいしんたちたての如くまんまんとこれをかこみ、伝令でんれい旗持はたもちはその左右に、槍組やりぐみ白刃組はくじんぐみ、弓組をせんとうに
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)