閨門けいもん)” の例文
なぜなら、その頃、太守の義景公を始め朝倉家の家中というものは、非常にみだれていた。国主の閨門けいもんが、権勢を持っていた。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
東は、西の十一世顕如の長子教如の創建で、長子が寺を出たということには、意見の相違があり、閨門けいもんの示唆によって長子が退けられたともいわれている。
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
閨門けいもんは正家の本に候えば、犯姪はんてつの迂論に及ばずして人々講究の事とは存じ奉り候えども、訣語けつご申上げ候なり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
そしてかれらの汚職の事実、将軍綱吉との閨門けいもん関係、などを調べている、ということだ。
山彦乙女 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
秀吉の如く閨門けいもんの裡に一家滅亡の種をかず、其が第一の禁物たる奢は女中にも厳にゆるさで、奥向にも倹素の風行はれしは、彼の本多佐渡守が秀忠将軍の乳母なる大婆に一言咎められて
大久保湖州 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それも役所から帰って、晩の十時か十一時まで飜訳ほんやくなんぞをせられて、その跡で飲まれる。奥さんは女丈夫である。今から思えば、当時の大官であの位閨門けいもんのおさまっていた家は少かろう。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
処へ、名にし負う道学者と来て、天下この位信用すべき媒妁人なこうどは少いから、えつも隔てなく口を利いてうままとめる。従うて諸家の閨門けいもんに出入すること頻繁にして時々厭らしい! と云う風説うわさを聞く。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蒯良かいりょうも、ぜひなく黙ってしまった。大義と閨門けいもんとはいつも相剋そうこく葛藤かっとうする——。が、今は争ってもいられない場合だった。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ことは、ときをさかのぼるし、余りに、宮中きゅうちゅう閨門けいもんの秘を語って、いたずらな奇を好むには似るが——ここに語らざるを得ない不幸な事実があった。
他国に例を見ないほどであるし、何よりも、光秀の顰蹙ひんしゅくしていたのは、主君の閨門けいもんのおさまらない点であった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孫堅方では、その出陣にあたって、閨門けいもんの女性やその子達をめぐって、家庭的な一波紋が起っていた。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
姦淫かんいん売色ばいしょくのみだらな風儀やら、良家の閨門けいもんのみだれやら、僧門の堕落やら、嘘つき上手と腕力のある者勝ちな人間のわが世の春をゆるすような暗黒面も持つのである。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀吉をめぐる女性群としては、松の丸どの、三条のつぼね、加賀の局、また、まだ少しあどけなさ過ぎるが、あの於茶々おちゃちゃだの、於通おつうだの、いまやその閨門けいもんそのも、色とりどりに
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ともあれ、かれは今、男の四十九歳という最盛期の人生に近づき、外には、小牧こまきに天下分け目の大戦を抱えながら、内には、閨門けいもんの政治にも、なかなか多忙をきわめていた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
永徳は大坂城普請おおさかじょうふしんの始まりから、命をうけて、城中へ通っていたので、その間に、秀吉の家庭、閨門けいもんのうわさまでを、ずいぶん、聞きたくもないことまでも、聞かされている。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おそらく妹は歌のこころをすぐんでくれるだろう。そして自分のないのちは、兄のあとをとむらうことを口実にして、蔓草つるぐさの垣にも似ている閨門けいもんの花々の群れからのがれてくれるだろう。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
縫い、攻守の備えに欠くるなく、地味はひらけて、民は豊かです。——しかしこの絶好な国がらにも、ただ一つ、脆弱ぜいじゃくな短所があります。国主劉表の閨門けいもんの不和と、宿老の不一致です
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀吉の側室そくしつに、うら若い淀君よどぎみとかいう美女がかしずくようになって、閨門けいもんめぐる奥仕えの者たちから、いろいろな曲事ひがごとが聞えて来ても、その寛やかな彼女の胸に、小波さざなみも立てることはできなかった。
日本名婦伝:太閤夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)