長吉ちょうきち)” の例文
長吉ちょうきちおもいきってそとてゆきました。けれど、みんなといつものようにいっしょになって、愉快ゆかいあそ気持きもちになれませんでした。
残された日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「旦那様、中村家なかむらやさんから電話がかかりましてね」彼女は息を切らせていうのです。「あのう、長吉ちょうきちさんがまだ帰らないんでございますって」
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
帆村は味噌問屋の小僧さん長吉ちょうきちを促して、警官たちに暇をつげるなり車上の人となった。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
零落れいらくした女親がこの世の楽しみというのは全くこの一人息子長吉ちょうきちの出世を見ようという事ばかりで、商人はいつ失敗するか分らないという経験から、お豊は三度の飯を二度にしても
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
長吉ちょうきちだ? 長吉なんぞじゃ訳が分らない。お神さんに電話口へ出ろって御云いな——なに? わたくしで何でも弁じます?——お前は失敬だよ。あたしを誰だか知ってるのかい。金田だよ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かおをしかめて、春重はるしげ見守みまもったのは、金蔵きんぞうあにイとばれた左官さかん長吉ちょうきちであった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
この時代の町奴の習いとして、その他の者共も並木なみき長吉ちょうきち橋場はしば仁助にすけ聖天しょうでん万蔵まんぞう田町たまち弥作やさくと誇り顔に一々名乗った。もうこうなっては敵も味方も無事に別れることの出来ない破目になった。
番町皿屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「あ、長吉ちょうきちさん、どうも有難う」
といわれるので、長吉ちょうきち落第らくだいしてはならないとおもって、うちかえってからも、その学校がっこうならってきた算術さんじゅつはかならず復習ふくしゅういたしました。
残された日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
以前奉公先なる待合の亭主の世話で新富座の長吉ちょうきち贔屓ひいきの客には知られている出方でかたの女房になって、この築地つきじ二丁目本願寺ほんがんじ横手の路地に世帯しょたいを持ってからもう五年ほどになるがまだ子供はない。
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
くる学校がっこうへいってからも算術さんじゅつ時間じかんになるのがにかかってひかじょうにみんながあそんでいるときでも、長吉ちょうきちひとりふさいでいました。
残された日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
長吉ちょうきちや、ここにっておいで、かあちゃんは、すぐうちへいってねんねこをってくるからな。どこへもいくでねえよ。」
谷にうたう女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おきぬは、四つになる長吉ちょうきちをつれて、やまはたけ大根だいこんきにまいりました。やがて、ふゆがくるのです。
谷にうたう女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
むらじゅうが、大騒おおさわぎをして、長吉ちょうきちをさがしたけれど、ついにむだでありました。年寄としよりたちは
谷にうたう女 (新字新仮名) / 小川未明(著)