鉄軌レール)” の例文
旧字:鐵軌
そのうち左へ折れていよいよシキの方へ這入はいる事になった。鉄軌レールについてだんだんのぼって行くと、そこここに粗末な小さい家がたくさんある。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
鉄軌レールがそれに映じて金色の蛇のように輝き、もう暗くなりかけた地面に、くっきり二条の並行線をかくしていた。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
燃ゆる様な好摩かうまが原の夏草の中を、驀地ましぐらに走つた二条の鉄軌レールは、車の軋つた痕に烈しく日光を反射して、それに疲れた眼が、はる彼方むかうに快い蔭をつくつた、白樺の木立の中に
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
代助はそれから夜の二時頃ひろ御成おなり街道をとほつて、深夜しんや鉄軌レールが、くらなか真直まつすぐわたつてゐるうへを、たつた一人ひとり上野うへのもりて、さうして電燈に照らされたはななか這入はいつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
代助はそれから夜の二時頃広い御成おなり街道を通って、深夜の鉄軌レールが、暗い中を真直に渡っている上を、たった一人上野の森まで来て、そうして電燈に照らされた花の中に這入った。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ちんちん動きますを支那の口で稽古けいこしている最中なのだから、軌道レールがここまで延長して来るのは、別段怪しい事もないが、気がついて見ると、鉄軌レールかたが少々違うようである。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
電車が赤い札をおろして、ぶうと鳴って来る。入れ代ってうしろから町内の風を鉄軌レールの上に追いくって去る。按摩あんますきを見計って恐る恐る向側むこうがわへ渡る。茶屋の小僧がうすきながら笑う。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すると停車場の方から提燈をけた男が鉄軌レールの上をつたつて此方こつちへ来る。はなし声ではんじると三四人らしい。提燈の影は踏切りから土手下どてしたへ隠れて、孟宗藪のしたを通る時は、話し声丈になつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
空には星があるが、高い所におのれと光るのみで、足元の景気にはならなかった。汽車路を通って行くと、鉄軌レールの色が前後五六尺ばかり、提灯ちょうちんに照らされて、つゆのごとく映ってはまた消えて行く。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)