がま)” の例文
艫に大きな飯たきがまをすえ、たきたての飯をひつにつめているのもある。その飯の色のまっ白なのが妙に目についてしようがなかった。
旅日記から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
おおきいいえがありましてね、そこの飯炊めしたがまは、まず三ぐらいはける大釜おおがまでした。あれはえらいぜにになります。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
花形大夫はながただゆうの二十世紀文福茶釜は、じつは彼が新宿しんじゅく露天ろてんで、なんの気なしに買ってきた、めしたきがまであった。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「どうもうもありません。娘のお雪と叔母のお常が井戸端で洗濯をしてゐると、その頭の上へ、煮え湯の一パイ入つてゐる、大がまをブチまけた奴があるんです」
菊五郎のあとがまというような意味で新たに加入させた権十郎も、近年やはり多病で、わずかに一回かぎりで同座を退き、鎌倉の別荘に引き籠ることになってしまったので
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
どうか臥んでいて下され、お湯ももうじき沸きましょうほどに含嗽手水うがいちょうずもそこで妾がさせてあげましょう、と破れ土竈べっついにかけたる羽虧はかがまの下きつけながら気をんで云えど
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ひろびろとした雪の野原を、目的もなくさすらつてゐるやうな荒凉としたおもむきが、現実の足の裏に吸ひついて来る気がした。しゆんしゆんと音をたててガスがまが燃えてゐる。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
させ荒繩あらなはにてくゝり付大がまくみ込みし大川の水を理左衞門屹度きつと見て夫々嚴敷きびしく水を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
真暗まっくらなところに麺棒めんぼうをもってこねた粉をのばしていると、傍に大がまがあって白い湯気が立昇たちのぼっていたり、また粉をふるっている時は——宅の物置のつづきのさしかけで、かどの小さな納屋の窓から
一 まゐり来てこの御台所みだいどころ見申せや、めがまを釜に釜は十六
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
きさまは、まだ釜師根性かましこんじょうがぬけんからだめだ。そんな飯炊めしたがまがねなどばかりてくるやつがあるか。それになんだ、そのっている、あなのあいたなべは。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)