野犬やけん)” の例文
そのためか、あるいは、クロがりこうで、用心深ようじんぶかかったためか、ほかの野犬やけんが、いくひきもつかまえられていったのに、クロだけは、無事ぶじでありました。
青い石とメダル (新字新仮名) / 小川未明(著)
ぴきが一すねにとまっても、いたさもかゆさもかんじないほど徳太郎とくたろうは、野犬やけんのようにすわっていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
界隈かいわい野犬やけんが居て、あるいは一疋、ある時は二疋、稲妻いなずま強盗ごうとうの如く横行し、夜中鶏を喰ったり、豚を殺したりする。ある夜、白が今死にそうな悲鳴をあげた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
大きな野犬やけん運ぱん用のはこぐるまをつくり、それを馬にひかせて、飼主のわからない犬を見つけると、片はしからつかまえてつんでいき、きまった撲殺場ぼくさつじょうへもってって殺しました。
やどなし犬 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
之を亡し得べからず、野犬やけんゑばと先づ成らむ。
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
すべて野犬やけんはりこうなものです。だれも、保護ほごしてくれるものがないから、自分じぶんゆるさないのです。
青い石とメダル (新字新仮名) / 小川未明(著)
ある犬通の話に、野犬やけんの牙は飼犬かいいぬのそれより長くて鋭く、且外方そっぽうくものだそうだ。生物せいぶつにはうえ程恐ろしいものは無い。食にはなれた野犬が猛犬になり狂犬になるのは唯一歩である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
投じ、彼らのしかばね野犬やけん野鳥やてうと爲せし
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
野犬やけんの一ぐんは、ジャックを中心ちゅうしんにして、自分じぶんたちの生活せいかついとなむことにしました。かれらは、どこへいくにも一塊ひとかたまりとなって、いつでもてきたる用意よういをしていました。
花の咲く前 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あかトラ」のはなしつよこころかれたのも、このジャックという年老としおいた不幸ふこう野犬やけんのことが、たえずあたまなかにあったからでした。叔父おじは、どういうものかジャックをこころからにくんでいるのでした。
花の咲く前 (新字新仮名) / 小川未明(著)