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采粒
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さいつぶ
『
一六、
三五の
采粒かの、はい、ござります。』と
隅の
壁へ
押着けた、
薬箪笥の
古びたやうな
抽斗を
開けると、
鼠の
屎が、ぱら/\
溢れる。
婆さんに
聞けば、
夫婦づれの
衆は、
内で
采粒を
買はつしやると、
両方で
顔を
見合ひながら
後退りをして、
向ふ
崖の
暗い
方へ
入つたまで。それからは
覚えて
居らぬ。
お
前様が
小児の
時、
姉様にして
懐かしがらしつたと
言ふ
木像から
縁を
曳いて、
過日奥様の
行方が
分らなく
成つた
時から
廻り
繞つて、
采粒が
着き
絡ふ、
今此処に
采がある……
此の
山奥に
双六の
巌がある。