遺漏いろう)” の例文
遺憾いかんながらこのたびも、遂に、弦之丞を討ち洩らしたが、次の機会には、必ずこの遺漏いろうの不名誉をすすぎまする、という申しわけだ。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
減らし色々の点で節約したけれども彼女の慰安いあんには何一つ遺漏いろうのないようにしたゆえに盲目になってからの彼の労苦は以前に倍加した。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
普通の目かくしでは、外から見て疑われる心配があるので、繃帯を使って怪我人と見せかけるのであろう。実に万遺漏いろうなきくちである。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
現在既知の科学的知識を少しの遺漏いろうもなく知悉ちしつするという事が実際に言葉通りに可能であるかどうか。おそらくこれはむつかしい事であろう。
打候聴候だこうちょうこうは察病にもっとも大切なるものなれども、医師の聴機穎敏えいびんならずして必ず遺漏いろうあるべきなれば、この法を研究するには、盲人の音学にくわしき者を撰びて
学問の独立 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
れば先生のかんがえにては、新聞紙上に掲載を終りたる後、らにみずから筆をとりてその遺漏いろうを補い、又後人の参考のめにとて、幕政の当時親しく見聞したる事実に
万事は当局の調査によって判明する事と思うが、とにもかくにもかような怪事件が校内に於て発生した以上、校内の取締に就いて何処かに遺漏いろうったものと考えなければならぬ。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
時々これを見ながら進行すれば順序もよく整い遺漏いろうも少なく、大変都合が好いのですけれども、そんな手温てぬるい事をしていてはとても諸君がおとなしく聴いていて下さるまいと思うから
文芸と道徳 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
此一句他日幕府よりの謝表中ニ万一遺漏いろう、或ハ此一句之前後を交錯し、政刑を帰還するの実行を阻障せしむるか、従来上件ハ鎌倉已来武門ニ帰せる大権を解かしむる之重事なれバ
将来の方略ほうりゃくをおうかがいして、秀吉征伐の大計に、遺漏いろうなきお打ち合わせもいたしおきたく、かたがた、御健勝ぶりをも拝しに参りました。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さて、準備は遺漏いろうなくととのった。もう決行の日をめるばかりである。それについても、彼は確かな目算があった。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
れば先生のかんがえにては、新聞紙上に掲載を終りたる後、らにみずから筆をとりてその遺漏いろうを補い、又後人の参考のめにとて、幕政の当時親しく見聞したる事実に
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「二十八日の通牒つうちょうは、もう、おのおののお手許へも、届いたことと思うが、当日の式事については、諸事、ご遺漏いろうのないように頼みますぞ」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで、愈々いよいよ復讐事業に着手したのだ。俺は自信があった。計画は少しの遺漏いろうもなく運ばれることと信じていた。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
街亭の布陣には、その現地へ臨む前から、とくと丞相のお指図もありましたゆえ、それがしとしては、ばん遺漏いろうなきことを期したつもりであります。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その間に波越警部は、あらん限りの智恵をしぼって、ばん遺漏いろうなく警戒準備をととのえた。無論大使邸にも度々足を運んで、大使にも面会し、建物の構造をも取調べた。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
或る日を目がけての綿密な工作と、その場合に遺漏いろうのない準備とが、江戸表へ潜伏した赤穂旧藩士たちの隠れに於て、目に見えない程ずつ徐々に進んでいた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「む、両探題も加えて、作戦には、遺漏いろうなきを期したい。足利どのも、明日は同道されよ」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
留守のかため、市街の戦備も、遺漏いろうなく手配した。また前に蜂須賀勢、黒田勢などを助けにやってある各出先へ、指揮、激励を送って、その状況を聞いた。そしてまず一安心と見たか
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なお、出来るだけ味方を狩りあつめ、夜明け前に、大岳へゆく途中の小猿沢こざるさわの谷川橋で——われわれを待ち合す手筈になっているから、万々、これで遺漏いろうはあるまいと、宍戸梅軒ししどばいけんはいうのだった。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遺漏いろうはあるまいが、ぬかるなと、書中、申し添えてやれよ」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いや鎌倉どのの代官として遺漏いろうのないよう万全を尽した。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「はて、なにか遺漏いろうがあったとでも、仰せられますか」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遺漏いろうはございませぬ」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遺漏いろうはないな」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)