譫語うわごと)” の例文
モハヤアノ譫語うわごとハ、譫語ヲ装ッテイルノデアルヿヲ疑ウ餘地ガナクナッタ。トスルト、何ノ目的デサヨウナヿヲスルノデアロウカ。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「寒月君、君の事を譫語うわごとにまで言った婦人の名は、当時秘密であったようだが、もう話しても善かろう」と迷亭がからかい出す。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
時々、寝殿のとばりから、譫語うわごとが洩れてきた。そのたびに、侍臣が駈けこんで、枕頭をうかがっていると、曹操はまなじりをあげて
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とき/″\譫語うわごとのように「まあ、面白い」とか「ほんとに人を莫迦ばかにしてるよ」と言って、唐突とうとつにぱか/\と笑います。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
彼女を破滅させる恐ろしい秘密を譫語うわごとに聞くという、二重の苦悶で頭が惑乱することがなかったならば、私は決して彼女を死なせはしなかったでしょう
麻酔剤 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
八方から、丁度熱に浮かされた譫語うわごとのような、短い問や叫声さけびごえがする。誰やらが衝立のような物の所へ駆け附けた。
場違いのステテコだ……てんで船中の大評判になったんだそうで……おまけに二人とも……大変だ大変だ……とか何とか変な譫語うわごとを並べたもんですから
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
曩謨婆誐嚩帝嚩囉駄囉のうぼばぎゃばていばざらだら婆誐囉捏具灑耶さぎゃらにりぐしゃや怛陀孽多野たゝぎゃたや怛儞也陀唵素噌閉たにやたおんそろべい跋捺囉嚩底ばんだらばち※誐※阿左※阿左跛※ぼうぎゃれいあしゃれいあしゃにれいなんだか外国人の譫語うわごとの様で訳がわからない。
そうして熱の高い時には譫語うわごとのように人形の口真似をして、パパアやママアを叫んでいたということだ。
河鹿 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あさっては正月というに天井のすすも払わず、鬚もそらず、煎餠蒲団せんべいぶとんは敷きっ放し、来るなら来い、などあわれな言葉を譫語うわごとごとく力無くつぶやき、またしても、えへへ、と笑うのである。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ただし、この想像は、一人の酔客があって、爛酔して譫語うわごとを発しているという想像だけで、その客の人相骨柄というようなものは、雪洞の光を待って、はじめて明らかなるを得たのです。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
夜具からヒョイと顔を出すと、譫語うわごとのように紋兵衛は云った。年は幾歳いくつか不明であったが、頭髪白く顔にはしわがあり、六十以上とも見られたが、どうやらそうまでは行っていないらしい。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
熱はげしくて譫語うわごとのみ言いしを、エリスがねもごろにみとるほどに、ある日相沢は尋ね来て、余がかれに隠したる顛末てんまつつばらに知りて、大臣には病の事のみ告げ、よきようにつくろい置きしなり。
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そして最後の苦悩の譫語うわごとにも自分の無罪を弁解して、繰り返した。
糸くず (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
「酔っ払っているか譫語うわごとを言っているかだ。」と先生が言った。
その夜から妻は高熱のために譫語うわごとをいうようになりました。
猫と村正 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
あの時の半睡半醒の状態は、大体あの折の日記に書いた通りであるが、「彼女ノ口カラ『木村サン』トイウ一語ガ譫語うわごとノヨウニレタ」
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
私も驚ろいてくわしく様子を聞いて見ますと、わたくしの逢ったその晩から急に発熱して、いろいろな譫語うわごとを絶間なく口走くちばしるそうで
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼女が覚醒しないで、そのまま私の腕に死んでゆくかも知れないという心配よりも、譫語うわごとの中で両人ふたりの秘密をいい出しはせぬかということが、むしょうに恐ろしくなって来ました。
麻酔剤 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
陽が西の空に廻る時分から譫語うわごとを言うのでございます、半病人のようになって、わたくしは気味も悪いし、奥さまのお妨げになってもいけないと思ったので、申上げずにいましたが
或る秋の紫式部 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
非常な高熱に浮かされながら、盛んに譫語うわごとを云い初めたものだそうです。
キチガイ地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
夫人は結納のことを気にして病中も譫語うわごとに云いつづけていたとやらで、三月の中旬に、光代がその打合せのために蘆屋へ来た。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「うん、あの時の話しじゃ御嬢さんの方が、始め病気になって——何だか譫語うわごとをいったように聞いたね」「なにそんな事はありません」と金田夫人は判然たる直線流の言葉使いをする。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
やがて、彼女はほんとうに危っかしい譫語うわごとをはじめました。私ははらはらして
麻酔剤 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
ソシテ最モ奇怪ナノハ、妻ノアノ譫語うわごとモ同ジ。………「木村サン」トイウ一語ガ今夜モ彼女ノ口カラ洩レタ。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その後も始終誰にもわての顔を見せてはならぬきっとこの事は内密にしてとゆめうつつのうち譫語うわごとを云い続け
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
と、己は譫語うわごとのように云った。そうして彼が無理に握らせた二十銭銀貨を大人おとなしくふところ蟇口がまぐちの中へ入れた。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
昨夜の妙子の譫語うわごとが原因で二人の間に感情のもつれがあるらしいことを察したが、それには触れずに、病人に食って懸ろうとする奥畑を宥め、御好意はまことに有難いけれども
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
看病している人の話だと、たまに意識を回復することもあるけれども、大概は昏睡こんすい状態をつづけていて、ときどき譫語うわごとらすのが、舞に関係した事柄ばかりであると云う。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「そなたは今しがた、妙な譫語うわごとを口走って呻って居た。何ぞ物怪ものゝけにでも襲われたのか。」
二人の稚児 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
と、病人は、今迄の譫語うわごとのような調子とは全然違う狂気じみた声を発した。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)