見誤みあやま)” の例文
数十年の間山中にくらせる者が、石と鹿とを見誤みあやまるべくもあらず、全く魔障ましょう仕業しわざなりけりと、この時ばかりは猟をめばやと思いたりきという。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
たい中根なかね平素へいそけつして成績佳良せいせきかりやうはうではなかつた。おれ度度たびたびきびしい小言こごとつた。が、人間にんげん眞面目しんめんもく危急ききふさいはじめてわかる。おれ中根なかね眞價しんか見誤みあやまつてゐた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
与力満谷剣之助の前でわざと喬之助を喧嘩渡世の茨右近と見誤みあやまり、そこへかくまえと言わんばかりに教えたのも、この日本橋長谷川町の岡っ引き金山寺屋の音松ではなかったか。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
僕のグラスの無色の酒を黄色のコンコドスと見誤みあやまり、自分の黄色のコンコドスを、もっと黄色い別の酒と見誤みあやまったのだ。だからコンコドスは最初から註文したとおり辻永の前にあったのだ。
地獄街道 (新字新仮名) / 海野十三(著)
おほいさははとよりもおほきく、なつあひだはね一部いちぶをのぞくほかは、全部ぜんぶ黒褐色こつかつしよくで、ふゆになるとゆき見誤みあやまられるように白色はくしよくかはります。これは寒國かんこくうさぎふゆあひだ眞白まつしろになるのとおな保護色ほごしよくです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
兄の身体が宙に漂うかと見誤みあやまるばかりでございました。
押絵と旅する男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)